八月へさよならを言え、鞄にはルーズリーフの束つめこんで(千種創一)
8月31日だ。ラジオ深夜便を聴いていたら前も聴いたことのある蟻の話をしていた。蟻で夏が終わる。
絵と生活
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八月へさよならを言え、鞄にはルーズリーフの束つめこんで(千種創一)
8月31日だ。ラジオ深夜便を聴いていたら前も聴いたことのある蟻の話をしていた。蟻で夏が終わる。
ドーナツと光るみどりのサイダーで土曜の朝を寝過ごしましょう(稲本友香)
作業中に持っている音速ラインのCD3枚をずっと聴いていた。昔から「逢いたい」と「ここにいる」を聴くとぞっとすると思っていたけれど、久しぶりに聴くとさらに怖い。
みぞれ、みぞれ、みぞれはぼくの犬の名で祖父が好んだ氷の味だ(岡野大嗣)
みぞれ、すごくいい名前だ。白い犬を飼ったらみぞれって名付けたい。みぞれ短歌、いつの間にか「水たまりは仲のいい雨」という連作に入っていた。
夏の夜のフライドポテト聞き役の四人でずつとつまんでゐたり(濱松哲朗)
梨を食べて、ユキノ進さんの「目に見えないものでは梨の味が好き冬の朝ほおが冷える感じも」を思い出した。
かなしみの量だけやさしくなれるならいま世界一やさしい私(月夜野みかん)
犬の散歩コースに海の家を仕舞う倉庫がある。今どこかの海に出ていっていて倉庫は空っぽで、電車で須磨駅を通過するたびに、この中に倉庫で仕舞われていた海の家があるような気がしてしまう。
どうしても泣くならここで 海ほどにひろい帽子をかぶってみせる(土井礼一郎)
『クリーピー』のことを思い出していたら、どうしても『CURE』を思い出してきて、衝動的にアマゾンで『回路』と一緒に注文した。そして買ってから10年以上経ってる小説版『CURE』を読んだ。途中で投げ出す気がすると思っていたのに一気に読んだ。
黒いってことは悪ってことじゃなく夜ってことで平和ってこと(谷じゃこ)
ツイッターをみていると際限なく好きなイラストレーターや絵描きのひとが見つかるし、行きたい展示も見つかるしで時間が経っていく。
幸せは点と点ですいいじゃない水玉模様で駆けていく夏(広央ヒロ)
伊藤潤二の『顔泥棒』をなんとなく読み返したら「私は日常生活の中でいやおうなしに他人の影響を受けなければならないのよ それだったらこの人みたいなきれいな人の影響だけを受けます」とあって、なんとなく『コンビニ人間』を思い出した。
都合よく胸に開いてる大穴に空から星が落ちてこないか(虫武一俊)
お盆で水まんじゅうがやたら家にあって、消費期限が今日までなので頑張って食べていたら、犬がもの欲しげに見つめてくる。くずの部分を少しあげたら美味しそうに食べた。
かなしみを遠くはなれて見つめたら意外といける光景だった(岡野大嗣)
流星群、ひとかけらも見れずだった。花火の音だけが聞こえて、音の元がわからなくて犬が挙動不審だった。
山を食う話をしたよあまりにも悲しみすぎてついにそこまで(正岡豊)
真夜中のニャーゴで藤村シシンさんの話を聞いていたら古代ギリシャ展にめっちゃ行きたくなる。線文字Bの本もほしくなる。
生き延びてしまったような顔をしてひまわりを抱くあなたが好きよ(田丸まひる)
月が二つになっている夢をみて、笹井さんの「今夜から月がふたつになるような気がしませんか 気がしませんか」を夢の中で思い出した。
この夏は観測史上君のこと最も好きになる予報です(嶋田さくらこ)
家に井戸があるのだけれど、ずっとあるから気にしてなかったけれど、いつからあるのか唐突に気になって母に聞いたら「水道がなかったときから」と言われた。
ひとりでは使い切れないこれからを誰かのあとについてゆきたい(島坂準一)
『クリーピー』、しみじみやっぱり好きだなぁと思うのは、香川照之が何者なのか結局さっぱりわからないところで、突然降りかかってきた出来事そのものに感じてすごくリアルだった。
夏休みお昼ごはんに次々と姿を変えて迫り来る麺(竹林ミ來)
『クリーピー』もう一度観たかったのに上映が終わってる。『クリーピー』を思い出そうとするとでかい白い犬が頭を占拠する。映画を観てるときも、でかい白い犬が登場してから「この犬、絶対殺されてしまうやつや。こんなでかいし」と思って観ていて、犬が出てくる場面は犬ばかり観ていた気がする。
入道雲製造所には胸板の厚い男が勤務している(松村正直)
「ご本、出しときますね?」が佐藤友哉島本理生の夫婦回だ!一回見たのに見てしまうし録画もしてしまう。
いちばんいい未来はそうだすこしだけ自分の記憶が混ざる明日だ(柳谷あゆみ)
いただいたビールの王冠が熊のマークでかわいかった。なんとなく捨てられないのでポケットに入れて一日ぎざぎざの感触を味わった。春日武彦さんがビールの王冠をお守りのように持っていたとどこかで書いていたのを思い出した。
もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい(岡野大嗣)
『明日、機械がヒトになる』を読んで気になって、石黒浩『アンドロイドは人間になれるか』『ロボットとは何か』『どうすれば「人」を創れるか』を買った。めろんさんの本ももっと読みたくなったので『死にたくないんですけど』『頑張って生きるのが嫌な人のための本』も買った。
スイカバーの森にいましたぼくたちは赤いしずくをなめていました(竹林ミ來)
オリンピックにあまり興味がないけれど開会式はいつも楽しみで見てしまう。日本のユニフォームがなんか昔みたいやなと思っていたら、一緒に見ていた祖母が「赤と白ですっきりしててええなぁ」と言っていた。祖母の年代くらいの時代設定なんかなと思った。
八月をおまへにやらう海のふたを開けてしまつたあの八月を(太田宣子)
会話の途中でふいにビートクルセイダースが出てきて、「ヒダカさんのお面のコピー持ってるで」と自慢した。探したらたぶんまだある。PVの撮影に参加してもらったもので、もう十年以上前でびっくりする。
早起きをすれば空気も海も山も私のものになった気がする(山上秋恵)
朝起きたら観察していたさなぎがなくなっていた。かなしい。叔母の運転する車に父と祖母と乗って、父が助手席に座っているのを後ろから見ていた。運転していない父を見るのが久しぶりで新鮮だった。
紙飛行機をつくるつもりで間違へてできてしまつた流星でせう(有村桔梗)
海猫沢めろん『明日、機械がヒトになる』、めっちゃ面白い。SRも3Dプリンタもアンドロイドも何一つ興味がなかったのに、ほんまに面白い。3Dプリンタなんて、なんかテレビでメロンを印刷して網目もきれいに印刷されてますよーみたいなのを見た記憶しかなかったけれど、3Dプリンタから3Dプリンタを作るとあって、いきなり3Dプリンタが生き物みたいに感じた。