絵と生活
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バターになるまで

何処へでも行ける身体を持ちながら同じ景色ばかり見ている(那由多)

HINTOを聴くと私の中の青春ゾンビが暴れ出す。このままだとCDを買ってしまう。
 
寝起き花見

寝坊した朝に冷たいまま飲んだ牛乳がおいしかった 春だ(井上閏日)

卵らが身を寄せあってひからびる二十時の回転寿司銀河
明日からは暦の下も春ですと年の数だけ抱きしめる膝
大きめのため息が出た僕の身を案じて父がくれる舌打ち
人間にスマートフォンが似合ってる首輪が犬に似合うみたいに
はちみつがついた小指をなめるとき熊だった日があった気がした
くりかえし臨時ニュースが彗星を待つ人たちの姿を映す
エアコンの設定温度に何回もふれて寒いがさみしいになる
燦獣イチオン、井上閏日短歌集より)
 
桜を少々

いつまでも四月が怖いぼくたちにおとなのふりかけふりかけたげて(服部恵典)

昔、祖父に連れて行ってもらったぶどう園がどんどん霊園になっていく。その霊園の桜が毎年きれいで悲しさが増す。
 
インク壺の中の猫

なでられたあとで夜へとすりぬける毛並のいろのインクください(やすたけまり)

ラジオ深夜便で和田竜さんの話を聴いて「村上海賊の娘」が読みたくなった。 ターミーネーターを観て映画監督になりたかった人が歴史小説を書いてるって面白いなぁ。
 
あの猫は柔らかすぎる

いきぐるしいほどさびしくて野良猫を酸素ボンベのごとく抱きしめる(神定克季)

柳本々々さんの夢八夜の最終夜を読む。蛇のように長いあとがきがついていて、なかなか最後まで到着しない。最終夜の副題「或いは遙かなるおふとんジャーニー」っていいなぁ。「おふとんジャーニー」がとても好き。
あとがき全集のすきなひとのすきなひとのすきなひとのあとがき。を読んで「ストロボ・エッジ」が読みたくなった。
 
ぽぽハウス

たんぽぽがたんぽるぽるになったよう姓が変わったあとの世界は(雪舟えま) 

今日はテレビ大阪で「スナッチ」がある。ブラッド・ピットが好きな妹と一緒に観た映画。懐かしい。 「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」ももう一度観たい。これも妹と観てる。2000年前後の映画はほとんど妹と観ていて、そのことがもう15年前のことでびっくりする。15年も前に観た映画ってもう夢みたいなもんやなと思う。
 
にわとりの祝福

いちめんのたんぽぽ畑に呆けていたい結婚を一人でしたい(北山あさひ)

毎週楽しみにしていた「デート」が終わってしまった。最終回とてもとてもよかった。もう一度一話から見たいのに、蛇を茹でる六話しか録画が残っていない。
犬の居る日なたがどんどんナズナに浸食されていく。
 
柔らかい生活

恋人と棲むよろこびもかなしみもぽぽぽぽぽぽとしか思はれず(荻原裕幸)

念願のなみはや大橋を渡った。想像以上にすごくてとても楽しかった。有料だったのがいつの間にか無料になっていて、二往復して橋を堪能した。
 
ぽぽぽ小隊

たんぽぽのぽぽひとつひとつに分散しぽぽそれぞれが春の軍隊(山下一路)

東京で早川世詩男展「春の証拠」とサンナ ・クヴィスト写真展 「この私も忘れてしまう 」をしているので、今とても東京へ行きたい。
 
うわの空のサンドイッチ

すきなひとのすきなひとのはなしをきいている そのすきなひとにもすきなひとがいる(柳本々々)

柳本々々さんのあとがき全集は、目を離した隙にたっぷり更新されていていつもびびる。短歌くださいに、柳本さんの「猫バスで降りる方法がわからずにまたたびをまく 高速に入る」という短歌が載っていて、ずっと高速に入りっぱなしの柳本さんを想像した。
 
マッチ一本の休息

誰も私に味方がいない 星灯る 橋はわずかな坂だと気づく(坂井ユリ)

テレビで「君とボクの虹色の世界」を観た。呪術的でよかった。車の上に置き忘れられたビニール袋の中の、金魚を祈るところがとても好きだった。あれは実際にみたことがある場面なんかなぁと思った。
 
いつもねている

会えない人はみんなきらいだ眠ったらぜんぶ忘れる話はすきだ(嶋田さくらこ)

第一回日本翻訳大賞が気になって、どれか一冊読んでみようと注文した「ストーナー」が誕生日に届いた。家族が寝静まってからコーヒーとチョコパイを用意して読み始めた。今ちょうどダウントン・アビーと同じ時代で、当たり前やけど世界はつながってるんやなぁと思った。
 
犬とミモザ

わたくしの犬の部分がざわめいて春のそこかしこを噛みまくる(荻原裕幸)

この短歌、去年知ってからずっと考えていた。結局犬の部分はわからないままでいる。
寝る前に「地獄でなぜ悪い」を思い出していたら、ジョン・ウォーターズの「セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ」が記憶の底からやってきて今とても観たい。
 
陽気な貝柱

ほら外はうららかだよ、と春の日にちからをほどきだす貝柱(岡野大嗣)

残像カフェのグラフィティーっていい曲やなぁ。全部もう一度聴きなおそう。
 
水槽ハウス

海だけのページが卒業アルバムにあってそれからとじていません(伊舎堂仁)

デートをみていたら、鷲尾くんが初デートで依子を眼鏡からコンタクトに変えさせていて「ひっ」ってなった。ありのままでいいって言ってたはずやのに。でも「普通の女の子みたいに恋がしたい」って依子が言ってたから、あんなプリティウーマンみたいなことしはったんかなぁ。ありのままってなんやろうと考えさせられた。
 
目玉焼き蒲団

朝食の前に三分眠ろうか人生のうちわずか三分(川合大祐)

「洲崎パラダイス」と「幼児狩り」が読みたくて「日本文学100年の名作 第5巻」を買った。他の巻も「夢見る部屋」とか「幸福の持参者」とかタイトルが好きだし装画もそれぞれ違っていていいし文庫やしで欲しくなってる。
 
予感

千年に一度ひっくり返される時計のなかにある砂の街(加子)

この短歌を読むとインターステラーが頭の中に蘇る。インターステラーのあの砂嵐はひっくり返るところやったんやわと勝手に考えていた。あとアメリカン・スナイパーの砂嵐は、こんな悪夢みたことがある、悪夢が映像化されてると思った。
 
春、灯る

幸福のかたちにとても近いのであなたの温度が欲しかったのです(後藤由紀恵)

体調が悪くて、犬と二日ほど顔を合わせていなかったけれど、犬は久しぶりに会ってもいつも通り尻尾を振って待っていてくれて犬はすごいと思った。
 
昨日の世界

今どこにいますか何をしてますかしあわせですかもう春ですか(たきおと)

穂村 水戸黄門の印籠みたいに、小さくてもそれさえ出せばどんな怪物でも消せるような何かを練り上げたかったんです。
(春日武彦、穂村弘「秘密と友情」より)
これさえあれば大丈夫。っていう印籠みたいなものはないんやろうけど、ほしい。春日先生のブルドックソースの王冠の話を読んで、自分も昔、ジェニーちゃんかリカちゃんかのガラスの靴っぽく作られたハイヒールの片方を持ち歩いていたのを思い出した。通学路で拾ったもので、ラメがきらきらで綺麗な靴だった。
 
会えない人

おしまいはいつも「じゃあね」と言うきみに「またね」と返す祈りのように(千原こはぎ)

貧血で頭に白いもやがかかっている。飲むと胃の調子が毎回おかしくなる強烈な鉄分の錠剤を飲むか、朝から悩んでいる間に夜になった。
 
みんな風船

「先生、吉田君が風船です」椅子の背中にむすばれている(我妻俊樹)

穂村 今、先生を救ってくれる物は何なの?
春日 それが今いち、ないんだよ(笑)。子供の頃はブルドックソースの王冠だったけど。
穂村 うーん。僕も一時期、桂馬の駒を持ち歩いていたことがあったから分からなくもないけど。
春日 単に桂馬じゃだめなの。王冠はぎゅっと握ると手にギザギザの跡がつくでしょ、ブルドッグの歯形みたいに。そのくらいのリアリティがないと、困るわけ。
(春日武彦、穂村弘「秘密と友情」より)
このブルドックソースの王冠のくだりが何回読んでも好きだ。
 
一本の傘

ことごとく傘の下には人がいてこれが雨だと信じています(吉田竜宇)

猫の世話のために妹の家に滞在。猫と遊ぶ気満々やったのに、猫はホットカーペットにべったり張り付いて寝てばかりだった。妹の家で読む用の本を持ってこなかったので、春日武彦×穂村弘「秘密と友情」を買った。単行本で持っているのにどうしても見つからず、もう一度読みたくなってしぶしぶ買った。
 
かもめの夢

草や木や山は眠るというけれど海は眠りにつくのだろうか(土岐友浩)

朝井リョウがオールナイトニッポン0の新パーソナリティー!びっくりした。歌人の加藤千恵さんと一緒にしはるのか。これは聴いてしまうわー。
 
巣の中の巣

家に着くまでが遠足  帰りたい家を見つけるまでが旅です (空木アヅ)  

塚口サンサン劇場で「太陽を盗んだ男」を観た。菅原文太はもちろんいいんやけど、沢田研二も好きやなぁ。「ときめきに死す」の沢田研二も好きだった。母が沢田研二大好きな影響もある気がする。
春日武彦さんが書かれたもので読み返したい話があって、どこに書いているかわからず手当たり次第探していたら、「奇妙な情熱にかられて」に加藤治郎さんの短歌が引用されていて驚いた。この本を読んだときは短歌のこと全然知らなかった。
 
やさしくとける

くりかえすことのしあわせ何度でもホットケーキは円形になる(高松紗都子)

穂村さん作詞の「メイプルシロップ」、一人でいると歌いたくてたまらなくなる。怖ろしい曲だ。
 
熊と昼寝するだけの午後

しあわせは欠片となって降ってきて白詰草となり配られる(松尾唯花)

明日から京都で始まるPARASOPHIA、楽しそう。マンガミュージアムで横山裕一展もあるし、京都に行きたい欲が高まる。
 
つぎつぎ生えるうさぎ

十年も前とはいはぬが去年よりずつと増えてるわからないこと(香川ヒサ)

黒沢清の「カリスマ」で、役所広司が人質をとった犯人から「世界の法則を回復せよ」と書かれた紙切れを渡されるシーンが頭のどこかをずっと彷徨っていて、ことあるごとに思い出す。風邪で何もできなくて、またこの「世界の法則を回復せよ」が頭を支配するようになって、私が好きだと思う短歌はこの「世界の法則を回復せよ」に答えてくれているような気がした。
 
鳥の不在

しあわせだ、しあわせだ!って怒鳴るとき雨に抱かれたようにうれしい(北村早紀)

風邪でつらい時につらいことを言われてつらいしかない、苦しい、と思っていたけれど、この短歌を考えつつ唱えていたら落ち着いた。短歌ってすごい。
 
とりどりの空

春空に千鳥格子の鳥たちを逃がしてつくる無地のスカート(岡野大嗣)

3月になった途端に風邪をひいてつらい。そして冬が一番好きな季節だという気持ちが年々高まってきていたので春になるのが悲しい。森に雪が降っていて人々がスキーをしている柄のスカートを春への抵抗のために今日はいた。

三月のカレンダーを作りました。縦と横とスマホ用とあります。→『サイレンと犀』カレンダー3月
 
三月の散歩

きょう読んだ本の話をしてほしい 三月は地獄にはそぐわない(佐々木朔)

雨宮まみさんの“穴の底でお待ちしています”を読んで、「結婚ってそんなに正義なんですか?」って訊きたいと思うことが本当によくある。自分が正しいと信じて疑わない人をみると県警対組織暴力で絶対正義の警察官として出てきた梅宮辰夫を思い出す。