絵と生活
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切手の汚れ

白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう(斎藤史)

朝野ペコさんの個展「ヘイガンさんの備忘録」をみに書肆スウィートヒアアフターへ。朝野さんの描く線はいつも良すぎてじっと見つめてしまう。虫眼鏡で観察したくなった。
 
拾った星屑

新しい星座をむすぶ過程では選ばなかった星たちがいる(たた)

塚口サンサン劇場で「県警対組織暴力」を観た。前に観たのはシネ・ヌーヴォの深作欣二追悼特集でもう10年以上前だ。再び観ても最後悲しくなる。
 
狼は狼のまま

遺失物処理係がゐてあなたへの回路はゆつくり閉ざされてゆく(門脇篤史)

この短歌、エターナル・サンシャインだ!と勝手に興奮した。
伊舎堂さんの短歌で「ライフから場面はイズへ 暗いなあ イズの場面で待つビューティフル」を読んで、ライフ・イズ・ビューティフル観たいなぁと思っていたら2日にBSである。観ないと。
 
獏、発進

世界なら無事だから春はまだだから必ず電源をお切りください(沖野樹里)

「アメリカン・スナイパー」を観た。めちゃくちゃよかった。亡くなった祖父が戦争の話をするのが好きだったことを映画観ていてふと思い出した。葬式のときに祖父の友人がそう言っていて、それまでずっと知らなかった。
 
コーヒーゼリーの闇

はじまりの気配が闇を少しずつはぎとってゆく朝を信じる(高松紗都子)

月9のデートが今回もとてもよかった。どんどん面白くなる。依子の見えている母の幽霊のようなものは何なんやろうなぁ、いつか消えるんかなとぼんやり思っていた謎が量子力学で説明されて、わーってなった。「お母さんの粒子は存在し続けるわ」ってほんまよかった。
 
たんぽぽドッグ

尾のやうにさみしき言葉を告げられて春となりゆくこころぼそいよ(木下こう)

母が腎臓結石になった。結石といえば柴崎友香さんが「よう知らんけど日記。」で救急車呼んで入院した話を思い出して、とても心配していたけれど、「体の中に石があるのが気持ち悪い。でも全然平気」と言う。今日病院行ったら石はだんだんさがってきているらしい。
 
空飛ぶコタツ

こたつから飛び出していく猫たちは冬の終わりを告げてゆきます(広沢流)

アカデミー賞、ロザムンド・パイクにとってほしかったなぁ。でもジュリアン・ムーアも大好きだ。アカデミー賞が終わったし、ほんとに春になっていく感じがする。
 
冬の厚みと薄い春

まっさらな紙の記憶が冬に手を差し伸べて冬の終わりが見えた(小林朗人)

柳本々々さんのアパートメントの連載は次回予告がついていて毎回気になる。次回は「こんなゆめをみたこんなゆめをみたえれくとりかるぱぱぱぱれーど」らしい。とても気になる。あとがき全集のプロフィール瀾に書かれている「私にとって川柳とは、ひとことでいえば、勇気です。」にぐっときて川柳スープレックスも気になる。
 
馬、芽吹く


運命は馬のたてがみ 撫でながらひきよせて乗る春近き朝(春野りりん )

月9のデートが毎週楽しみで妹もはまっているので妹と毎回見たい。主人公の巧は高等遊民を名乗っているけど、嘘でも何らかの夢を語ったらもっと容易に寄生させてくれる女性が現れるだろうにそうしないところに巧らしさがある。
 
春の庭の炬燵

さよならをちゃんと言わなきゃ永遠に春にならないような気がする(山本左足)

須磨子さんの新刊「こくごの時間」を買った。石川啄木の短歌が載ってる。ジマさんが絶賛してるだけあっておもしろい。くまの子ウーフの「ウーフは、ウーフでできてるんだよ。」ってこどもの時より今読んだ方がすごい衝撃。
 
海をみる

カーディガンの袖に片腕ずつ通す むこうの海にふれそうになる(小谷奈央)

ラッスンゴレライを思い出そうとすると先にレッツラゴンが出てきてしまう。ベラマッチャが好きだった。
 
林檎のあかるさ

わたくしの心臓として適当なりんごをひとつ買ってください(有村桔梗)

計画通りにできない自分が嫌になる。イライラが伝わるのか犬が暴れる。
 
雨がくる

においから先に世界に立ちこめてそれから雨が降るときは夜 (岡野大嗣)

布施ラインシネマで20日まで「太陽を盗んだ男」をしてる。「ダイナマイトどんどん」を見逃したしこれはなんとか行かないと、と焦っていたら塚口サンサン劇場でもかかるとさっき知った。28日からは「県警対組織暴力」が!うれしい。観に行きたいなぁ。
 
泣きキツネ

「さがさないでください」とあるけれど丘向こうまで続く星屑(加子)

消しゴムは、一度分裂するとそこからとめどなく分裂していって、あっという間になくなっていく。ここ何日か消しゴム買わないと、と思いながらずっと買い忘れている。
 
犬に時間の流れる

チョコレートくちに入れそっと待っている しあわせだった日々の終わりを(上澄眠)

妹の家に泊まったら寝るとき豆球つける派になっていた。こどもの頃母方の祖母の家に泊まるときも豆球がついていて、なかなか眠れなくて、足で砂壁を触ったりテレビの横に積んである「壮快」「わかさ」の見出しを読んだりしていたことを思い出した。砂壁は触るときらきらが手について好きだった。
 
お湯の夢

わたくしを温めるため沸かす湯はかつて雪なる記憶を持てり(中畑智江)

いつかやるやろうと思っていた「腕時計をなくす」をやってしまった。妹の家の食卓のテーブルに置いた気がするのでありますように。時計がないと不便なので妹が貸してくれた。人の時計は落ち着かなかった。
 
スノーマンサンド

わたしにはわたしがいるよ右の掌で冷えた左の拳を包む(藤澤幸男)

犬がお気に入りの歯磨きガムは、犬用クッキーと全然違って、何かの機械の部品のような形をしていて色はクロレラ色。犬の食べ物は落差が大きい。
なりゆきサーカス企画展「赤い糸」が終了しました。見てくださった方々にお礼を言いたいです。なりゆきサーカスの方が搬入搬出販売などすべてしてくださったのもお礼を言いたい。
 
スワンフロート

雪にかなり近い感じの音がして午後もわたしを出ないで過ごす(荻原裕幸)

犬用クッキー、いつも買っているものがなかったので違うのを買ったけれど、それもまた骨の形をしたクッキーだった。でも大きさも色も違うし味もきっと違うだろうから食べるか心配していたのに、犬には同じクッキーに見えているのかいつも通り食べていた。犬用の骨型クッキーを見ると感じるなんかよくわからんもやっとした気持ちがスワンボートを見たときにもやってくる。
 
プレーンシネマ

しあわせな結末でいいぼくが見ることの出来ない映画はぜんぶ(山本左足)

「心のなかにずっと雲がかかっていて、そこから延々と雪が降り続いている。短歌というのはその雪で作った雪像みたいなものじゃないか、と思うことがあります。 」と山本左足さんがブログで書いていてとてもいいなぁと思った。
 
薄氷の毛布

毛布にはちいさな熊が住んでいて春はまだだと伝えたりする(魚住蓮奈)

「ゴーン・ガール」の次の日に観た「薄氷の殺人」、まだなんか感想が整理つかなくてずっともやもやしてる。好きなのか嫌いなのかわからない。観た瞬間はあんまり好きじゃないなと思っていたけれど、妙にちらちら思い出す。主人公が一人で踊り出すシーンの物悲しさとか。
 
しんしんとする味

仲直りしてあげるから買ってきて雪のにおいのアイスクリーム(嶋田さくらこ)

カクノを使っていると、頻繁にペン先へ鼻を近づけてインクの匂いを嗅いでしまう。
 
綿とため息

溜息もその他の息も真つ白でからつぽになるやうな気がする(荻原裕幸)

昔、今はもうない東宝明石で市川崑の「かあちゃん」を観た。主演は岸惠子だった。「かあちゃん」も「おとうと」と同じような銀残しの味わい深い映像で、「おとうと」を観て私の中で岸惠子はあの独特の色彩の中で生きている人になった。
満開の桜を「おとうと」で観て、2015年の桜はまだだけど1960年の55年前の桜がもうみれたなぁと思った。
 
梅干しの味

いつかくる夜明けのためにポケットに蓄えている幾つもの朝(香村かな)

元町映画館で市川崑の「おとうと」を観た。岸惠子のすばらしさに今更気が付いた。岸惠子が神社で男に言い寄られたとき助けに現れるアヒルの大群がとてもよかった。画面いっぱいアヒルだらけになった。みんな笑っていた。
 
山になるまで

とめどなく不安と緊張あふれ出る奇跡の泉かおれの頭は(瀧音幸司)

夜中にお菓子でも食べようと台所をごそごそすると犬が起きてきてワンワン鳴く。犬がまだ子犬だった頃、寂しいのか台所で物音がしたらキャンキャン鳴いていたのをその都度思い出すのだけれど、もうキャンキャン寂しそうな声でなく、「菓子をよこせ」という野太い声しか聞こえてこない。
 
おでんの海

急に君はちくわで世界をのぞいてる 僕は近くに見えていますか(千種創一)

なりゆきサーカス企画展「赤い糸」に参加しています。阪急百貨店10階・梅田スークで2月4日〜10日まで。いろいろな作家さんが参加していて、すべての作品が3240円か5400円で販売、そのまま買って帰れます。私は二点だけひっそり参加してます。

「私に似た猫」、「ゴーン・ラビット」3240円、額は無印のフォトフレーム
 
消失羊

触れてゆくそばから指が泡になる君はどこにもいない人だな(飯田彩乃)

元町映画館で「私は二歳」「黒い十人の女」を観た。面白かった。船越英二がなんとも言えずふわぁ〜としていた。終盤、岸恵子に「男の形をしてるだけ」って言われるのにぴったりのふわっと感。二本とも斜め前の席に同じおじさんが座っていた。
 
レーズン発掘隊

働けど働けど別に手も見ないパンのレーズンじっとみつめる(柳本々々)

冬の須磨海岸は、なにをするでもなくぶらぶら歩いている人がけっこうたくさんいて、カモメを見る人になるのも競争率が高い。明日からアパートメントで柳本々々さんの連載が始まるので楽しみ。あとがき全集。で知った「きつねうどんの頃は覚えてないきつね/久保田紺」が頭から離れない。
 
本物と偽物

いつまでもいつまでも春を待てるならずっと冬でもいいと思った(たきおと)

歌人の江戸雪さんが短歌の話で「伝えたいこと、言いたいことは言わない方がいい」というようなことを言っていたのがずっと頭に残ってる。小説とか映画とかでも言いたいことってその物語の核になるものだから、それはうまいこと厳重に隠されてないとあかんのやろうなぁと寝る前に考えていた。
 
こたつソフト

人ひとり巻き込まれたる形して炬燵蒲団の育ちゆくかな(濱松哲朗)

「ニュー・シネマ・パラダイス」を久しぶりに観た。久しぶりに観ても幸せな少年時代のトトがいた。