絵と生活
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夜中の音

世界中の果実が土に降り終えてまた繰り返す次のひととせ(ユキノ進)

妹とモリス氏と紅白をみる大晦日。二人とも麻布大学なので野鳥研究部について聞いたりした。
今年は、岡野さんの歌集「サイレンと犀」の装画がちゃんとできて本当に本当によかった。
明日は、朝7時のバスに乗って妹の家の猫たちに餌をやりにいく。
 
夕暮れ珈琲

コーヒーはまだ温かい陽のあたる砂場に裸足で飛びこむように(沼尻つた子)

10ヶ月ほど前にも沼尻つた子さんの短歌で絵を描いたのだけれど、そのときもカップを持ってる。
全然気付かなかった。



浅いカップぶ厚いグラス汚しつつドリンクバーへ向かう 生きたい(沼尻つた子)
 
足元のくらげ

わたくしのからだを好きにただよえるこころが今日はうっとうしくて(金田光世)

人間にはね、ある点は気にするしある点は気にしない人がいるの、その組み合わせの集合でしかないの、あんたはあたしの部屋が散らかってることが気になるけど、あたしはあんたが部屋にラッセンの絵を飾ってることが、すっごいすっごい気になるの、でも何も言わないでしょ?津村記久子「まともな家の子供はいない」収録「サバイブ」より

津村さんの小説にラッセンの絵、合うなぁ。すごく自然に出てきて感動した。
 
こぼれる

バスタブを隅まで磨く 明日こそわたしはわたしになれますように(秋山生糸)

お昼に明太釜玉を食べて元町のcalasではりーさんの展示を観て、気になっていたカクノを買って帰った。買ったはずなのにどうしても見つからず、この前再び買った津村さんの「まともな家の子供はいない」を読んでる。「エヴリシング・フロウズ」の女子版みたいで面白い。買ってよかった。
 
カモメソーダ

もうダメだおれはこれから海へ行くそしてカモメを見る人になる(瀧音幸司)

山本左足さんのブログを読んだら、この短歌の考察に「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」が出てきて、おおっ!となった。「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」、とても好きな映画なのに全然思いつかなかった。つげ義春の漫画っぽいのもなんかわかる。カモメを見る人って石を売る人の友達のような気がする。
 
寒いからまた今度

ほんたうは一度もできたことがない至極まともな雪だるま、他(目黒哲朗)  

この前していた「ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」、録画しておけばよかった。もう一度みたい。正月は猫しかいないから元旦から映画を観に行こうと思う。

 
雪だるま作家のクリスマス

独りではできないことで溢れてる サンタにだってトナカイがいる(嶋田さくらこ)

鉛筆に誰かの歯形がついている。
頭を洗って濡れたままで外に出ると子供の頃の花火を思い出す。
台風に名前があるように、僕のこの頭痛にも名前をつけよう。
砂糖を入れずにミルクだけにしました。雨だから記念に。
輪ゴムが赤かったというだけで捨てられなくなるこの気持ち。
炭酸の抜けたジュースを飲むとこれがお前の本当の姿か。と思う。
ねこの顔と首の境目を探したけど、今日も見つからなかった。
100%ORANGE「ひとりごと絵本」より

クリスマスだから少しでいいから幸せな気持ちになりたくて、「ひとりごと絵本」を読んだらだいぶ幸せになれた。クリスマスに本を誰かにプレゼントしたことがないけれど、もし贈るなら「サイレンと犀」かこの本にしようと思った。
 
インターステラーサンタ

十二月二十四日と十二月二十五日は異様に長い(木下龍也)

ミスドミスドってずっと思っていたけれど、セブンイレブンのドーナツが美味しくてミスドのことをすっかり忘れた。正月の予定が妹の家の猫の世話に決まった。
 
花束の恋人

あすはきょうの続きではなく太陽がアメリカザリガニ色して落ちる(虫武一俊)

この短歌は柳本々々さんのブログで知った。→あとがき全集。
私も短歌研究の「うたう☆クラブ」特集号を持っているので読み直そうと思う。
名古屋のちくさ正文館書店に行ったら「サイレンと犀」が三冊も置いてあった。塔も未来もあるすごい本屋だった。その上袋にルオーのキリスト画が印刷されていて、伊丹のルオー展を観に行ったところだったのでとても驚いた。
 
ちぢむ雲

しんでしまうよしんでしまうよ雪が降るしんでしまうよしんでしまうよ(御糸さち)

この短歌は工藤吉生さんのブログで知った。→存在しない何かへの憧れ
雪がしんしんと降るの「しんしん」がこうなるのか!と思った。
 
白熊と皿とパン

ハムレタスサンドは床に落ちパンとレタスとハムとパンに分かれた(岡野大嗣)

岡野さんの短歌の中でこの短歌が一番好きな気がする。「パン」が二回出てくるところがポイント。「サンド」だから。という穂村さんの評でなるほどなぁと思った。音の響きの着想が福永信さんの「コップとコッペパンとペン」からというところも好き。
今日はシマウマトートバッグが飾られているのを見にシマウマ書房へ。名古屋まで近鉄特急で初めて行った。
 
お隣さん

硝子戸が白い 言葉の隙間から抜け出した息を捕まえるから(鈴木晴香)

芥川賞候補、山下澄人の「ルンタ」が入ってない。なんとなく入ると思っていた。
三宮駅前とセンター街のジュンク堂で「サイレンと犀」を目視確認した。
 
食パンドミノ

同じパンばかりをいつも買っている同じ毎日嫌いなくせに(西之原正明)

「エターナル・サンシャイン」を二回観てミシェル・ゴンドリー展へ行きたかったという気持ちを整理した。芥川賞直木賞候補が発表されていた。今回全然わからない。
 
みんな白く

雪が降り出したことにも気づかずにポストのなかでまどろむ手紙(ながや宏高)

元町のカフェcalasでしているはりーさんの展示見に行けない、どうしよう、と焦っていたら、28日までだった。行ける。よかった。カフェのすぐ近くのギャラリーVieで福田利之作品展をしているので、まとめて行こうと思う。伊丹市立美術館のルオー展が23日までで早く行かないといけない。
 
オムキツネ

オムレツに包んだものの詳細を書いた手紙が届く食後に(我妻俊樹)

犬が初めて寒いと感じたようで、今まで日中はずっと外で寝ていたのに今日は中で寝ていた。
雨宮まみさんの「失恋の残りもの」12回が更新されていて、前回の冷蔵庫のマグネットの話も今回のマニキュアの話も短歌っぽいなと思った。→失恋の残りもの(12)マニキュア

 
この前の星

オムレツが金色だった朝もある全部まぶしくて気付かなかった(倉野いち)

なんばまで行ったら「仁義なき戦い」が観れる。ありがとう新午前十時の映画祭。なんとか観に行きたい。
 
星と星

手を振った ぼくたちの住むこの星を仰ぎ見ている誰かのために(山本左足)

風邪気味だけれど、どうしてもふたご座流星群が見たかったので深夜に外にでた。7個見て満足した。
 
夢の中の日曜

夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう(穂村弘)

眠れないときはジャック・リヴェットの「恋ごころ」のポスターがはってあるあたりを(真っ暗で見えないけれど)見ていて、だんだん明るくなってくるとそのポスターのワイン色とか恋ごころの文字とか女の人が天窓から顔を出しているところとかが浮かび上がってくる。そしてなんでこのポスターがはってあるんやろうと毎回思う。
 
白い生活

しあわせの分配として王国がもれなくわたすポケットティシュー(山下一路)

期日前投票に行った。寒すぎるし一仕事終えた気になってしまい、40%OFFになったネネットの夢いっぱいダウンを買ってしまった。
 
深夜、クマと手袋と

手袋をつけるかどうか手袋とじゃんけんをして負けたらつける(竹林ミ來)

眠れないまま6時25分のバスに乗ったら、だんだん明るくなってくるのにテンションが上がり一人感動していた。でもちゃんとした正しい人々に囲まれて、自分だけ正しくないなと思って悲しくなった。
 
水平線から逃げる

海だってあなたが言えばそうだろう涙と言えばそうなんだろう(木下侑介)

「6才のボクが、大人になるまで。」を観た。とてもよかった。パンフレットを読むと「ゆっくりと年齢を重ねていくような映画を作りたかった」とあって本当にそんな映画だった。評論家の人が書いてる「時間に祝福された映画」もぴったりやなぁと思った。
 
もう食べたくない甘いもの

さようなら さよなら さらば そうならば そうしなければならないならば(枡野浩一)

むしゃくしゃするので犬と遊んで気分を変えようとしたら、ボールと間違えられて小指のはらを噛まれた。皮がべろっとめくれた。パソコンでAを打つ時とCtrl+Zを使う時、とても痛い。
 
光る湯気

さびしいと決して言わずうつむいて寒い寒いときみは言いたり(中井守恵)

短歌研究の年鑑、めっちゃ高いなぁ。歌集も普通に売ってないし高い。あるところにはあるんやなぁと思うと虚しくなってくる。「サイレンと犀」を予約してくれる人がいるのはとてもありがたい。
 
すしの降る夜

さっきからたまごだけしか流れない回転寿司にいもうとといる(有村桔梗)

冬の犬は昼間、廃タイヤ(なぜそこにあるのかわからない)の隣で丸くなって寝ている。遠くから見ると碁石のようだった。
 
冬の行事

幸せを形にしろと言われたら君と二人でおにぎり握る(木下侑介)

妹が朝から大量のおにぎりを握っていた。友達とのクリスマスパーティーでおにぎり担当になったらしい。私は竹尾ペーパーショウへさっと行った。ただの紙がボルボックスとかクンショウモみたいな生物になっていた。
 
月面でさぼる

ちゆうしんがひえきつてゐるかたゆでのたまごをよるのキッチンに剥く(大西久美子)

犬の散歩中に満月をまじまじと見た。せっかくの満月なのに犬は一度も上を見ない。縄張りの確認にとても忙しそうだった。
 
ねむい泡

「寝ちゃダメだ……寝たら死ぬぞ」と言い聞かせ眠りに落ちて死んでいきたい(大村椅子)

分厚いコートを出したら、ポケットから付箋の化石が出てきた。化石だけれどまだちゃんと粘着力がある。妹の子が先週はしなかった指差し確認を突如し始めて、ETごっこばかりしてる。
 
冬はマフライオン

たてがみを失くしてしまったライオンが大きな猫のふりして眠る(やじこ)

この短歌を作ったやじこさんがさらに創作してくださっていた。絵本みたい。
たてがみを失くしたライオン|yajco|note
 
犬のまたたき

かつて犬だったと思う。部屋中にひかるほこりのつぶを見つめて(山中千瀬)

インターステラーは、映像もストーリーも面白くてもう一度観たいと何日か経っても思う。SFの知識がほとんど何もない私が印象に残ったのは、メッセージは必ず届けられるということだった。バック・トゥ・ザ・フューチャー2のラストで、マーティが1885年のドクからの手紙を受け取ってるのを観て「えーすごいなぁ」とこどもの頃思ったのと同じような感覚があった。パンフレット、買えばよかった。
 
サイレンと犀

岡野大嗣歌集「サイレンと犀」の装画と挿し絵を描きました。
デザインはいつも何かとお世話になっている駒井和彬さんです。
1日からアマゾンの予約が始まっています→サイレンと犀
どうぞよろしくお願いします。