絵と生活
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昨日、熊と

リプトンをカップにしずめてゆっくりと振り子のように記憶をゆらす(蒼井杏)

毎年応募していたHBファイルコンペ、今年は応募しないので参加費で歌集とか
角川短歌とか短歌研究を買おうと思う。歌集出版ラッシュで破産しそう。


 
そっとふくらむ

またお会いしましょう 棚の裏側でビンのキャップが見つかるように(虫武一俊)

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の明るさに元気づけられた。


 
老猫姉妹と九月の風

道ばたで死を待ちながら本物の風に初めて会う扇風機(岡野大嗣)

金木犀が香ってきた。毎年、家の金木犀の香りなのか隣近所のなのかわからない。
秋祭りが近づいてきて、太鼓の練習の音が夜聴こえてくる。
太鼓の音もどこから聴こえているのか、いつもわからない。

 
犬をなでるような気持ち

水だとは思いもよらずこわごわと波うちぎわで海にさわった(中畑智江)

去年、原美術館で観たソフィ カルの「海を見る」を思い出した。
イスタンブールで今まで一度も海を見たことのない人々に初めて海を見せる映像作品だった。
この短歌を読んで、あの展示観に行ってよかったなぁと時間差でしみじみ思った。

 
使いみちのない体温

三歩あとを必ずついてくる孤独ときおりぎゅうと抱きしめてやる(久野はすみ)

録画したこころ旅を寝る前にみる。ぼんやりできてちょうどいい。

 
草原だと思った

まなぶたへ何か当たってああこれは雨か、小さくうなずいてゆく(阿波野巧也)

歩くのにいい季節になったので、なみはや大橋を歩きたい欲が高まっていく。
「なみはや大橋を歩く会」とかないだろうかと調べたら、あるけどガイドがついて1500円かかる。
めがね橋だけでも1人で見に行こうと思う。

 
入浴する犬の歌


ミュージックビデオに広い草原が出てきてそこに行きたくなった(五島諭)

星霜珈琲店のカフェオレがどんな味なのか気になる。
カフェラテとトマトクリームのチキンカレーしか頼んだことがない。


 
夜を待つ夕焼けの姿勢

ひとこともしゃべらなくても生きているすでに二日目まだ生きている(西之原正明)

横山雄個展「もうすぐそこへ行く」へ行った。
ツイッターでみていた、鳥を抱えて座る女の絵もあってとてもよかった。
中崎町の駅は、壁が青いタイルで揺らめいていて水族館に行きたくなった。


 
みんなねている


動物は何も言わずに死んでゆく人間だけがとてもうるさい(木下龍也)

早起きできたので、大阪ステーションシネマへ幕末太陽傳を観に行く。

 
残業サラダ

ああサラダボウルにレタスレタスレタス終わらないんだもうねむいのに(木下龍也)

‎にっぽん縦断こころ旅、ほんまにいい番組だった。
柴崎さんの「よう知らんけど日記」によく出てきてたのに、「柴崎さん、テレビ好きやなぁ」
ぐらいにしか思ってなかった。月曜から秋の旅が始まるからみよう。


 
レタスが浜辺めいて困る

レタスからレタス生まれているような心地で剥がす朝のレタスを(中畑智江)

柴崎さんが出てる「こころ旅」をみた。火野正平ってすごいなぁ。


 
安全な狼の妄想

さみしくて見にきたひとの気持ちなど海はしつこく尋ねはしない(杉崎恒夫)

柳本々々さんのあとがき全集。に食器と食パンとペンとあとがき。がある。うれしい。
「エヴリシング・フロウズ」のヒロシは「ウエストウイング」で小学生だったヒロシなんやなぁ。
こんなに大きくなって、と親戚のおばちゃんみたいな気持ちになった。

 
闇の中の音楽

どうしてだ。声がまったく聞こえないこの夜がぼくを消すかも知れない(依田昇)

津村記久子「エヴリシング・フロウズ」を買った。
一ページ目の、大正区のイラストマップだけでもう読むのが楽しみ。


 
白鳥から白鳥

水面をなぞる舟の尾やわらかくわたしを絞り尽くすのはわたし(大森静佳)  

岡野さんの歌集「サイレンと犀」の装画が佳境に入る。
雨宮まみさんの連載「失恋の残りもの」、今回はもてる女性の話だったのだけれど
こういう気づきの瞬間って誰にでもあるなぁと思った。
そしてどうしても思い出してしまうのは、マトリックスのネオが目覚めるシーン。

 
離陸

目覚めたら明日のことさえ分からずに空とかになっていればいいのに(箱囲亮太)

米田知子展「暗なきところで逢えれば」が姫路市立美術館で始まってる。
「春の庭」の表紙写真の人やって昨日気が付いた。


 
きのこ狩りの作法

チョコレートくちに入れそっと待っている しあわせだった日々の終わりを(上澄眠)

文学フリマ、5分くらいで帰ってしまった。いろいろなものを買い逃してる。
デュフィ展は幸せな気分になった。


 
瞬く間にはばたく

ひとりでもゆけるところが増えていくどうして大人になるのだろうか(松尾唯花)

明日はデュフィ展行って、文学フリマ行って、星霜珈琲店でカレーを食べたい。
そのために早寝早起きしよう。
明日明後日と泊まりにくる妹がおむつを宅配で送ってきた。二日分らしい。

 
on the 48


お見舞いに二十四人で繰り出した 四十八色のバラを手に(竹林ミ來)

miraichikの月間MVPは、8月15日の
「落ちている蝉の隣りに添えられた煙草の白く白く眩しい」に投票します。

 
狼とドッペルゲンガー

百鬼夜行観光百鬼夜行バス 冬の終わりの信号わたる(鈴木加成太)

小川洋子「原稿零枚日記」を読んでる。
玉入れの、あの籠を支える役をやってみたいと主人公が言っていて
あの籠を先生の誰かが支えていたって何十年かぶりに思い出した。

 
金平糖ダッシュ

「あたしには輝く未来しかない」と何度もとなえ電車を降りる(檀可南子)

バルテュス展で買った青い泥絵具にアラビアゴムを混ぜて水彩絵具にした。
大量にできたのに、あと五年分ぐらい泥絵具がある。


 
沖のパン

俺はパン。工場生まれで割合に日持ちするんだ。以後よろしくな(飯田和馬)

飯田和馬さんの短歌手控えが復活したので早速読んだ。


 
できたてのスワンボート

もういやだ死にたい そしてほとぼりが冷めたあたりで生き返りたい(岡野大嗣)

梨とぶどうと卵を妹の家に届けに行った。
妹の家に行く道にあるハレルヤ製菓と謎のアイスクリームカフェをいつも覗いてしまう。


 
サイダーの底

目覚ましを掛けずに眠りゆくことの至福よふかいところまでゆく(内山晶太)

森本将平個展「すべて夏に沈めた」を観に行って、本当に夏が終わってしまった。


 
虹クラッカー

得がたくて失ひやすき時の間の微笑のやうなわかものに会ふ(春日井建)  

京都で2人に道を1人に雨が降っているか尋ねられた。雨しか答えられなかった。


 
夜更けのタマゴサンド

よくみれば体育座りは複雑に折り畳まれたこころのようだ(柳本々々)  

雨宮まみさんの失恋の残りもの、回を重ねるごとに身につまされる。
絵をつけるのが残り4回になってしまってさびしい。


 
卵の番人

適切な質の空気をのせている二十世紀のエッグスタンド(山本まとも)

このエッグスタンド、もう卵をのせる機会がないんやろうなぁと思った。
卵をのせないエッグスタンドって、何の役にも立たない無駄なものでしかない。
「室温でぐんにゃりしてる今だって保冷剤って呼び名しかない」
「ヒッチハイクのコツの話を思い出し事務所の外の道を見ている」
冷たくない保冷剤も無駄だし、ヒッチハイクのコツは実際に使うことはないだろう。
「デジャ毛」って面白いタイトルがつけられているけれど、山本まともさんの連作は少し悲しい。

 
めがねのふもとで

ぬばたまのzoffの眼鏡がこいびとの暗闇ばかり映し出すのよ(たえなかすず)

森本将平個展「すべて夏に沈めた」3日〜7日
横山雄個展「もうすぐそこへ行く」4日〜21日
千海博美個展「Plantarium」17日〜30日
行きたい。ボローニャ国際絵本原画展もすっかり始まってる。

 
オオカミとひとりぼっち

ああきみは誰も死なない海にきて寿命を決めてから逢いにきて(平岡直子)

妹の新居は、白鶴の醸造タンクに阻まれて朝日が見えない。
足立美術館で毎週土曜日に岡本喜八の上映があると知った。島根県、遠すぎる。
殺人狂時代も江分利満氏の優雅な生活もああ爆弾も独立愚連隊も肉弾もみんな上映される。
島根の人がうらやましい。


 
醒めたホットケーキ

目を覚ますことに失敗した朝のきみがいるところは孤島だ(我妻俊樹)

朝から猫をなでつつ「『女の小箱』より 夫が見た」「炎上」「カンパニー・マン」を観た。
「殺人狂時代」の仲代達矢が一番好きだけれど「炎上」の仲代達矢もいいなぁ。


 
おにぎりのくぼみ

この世からいちばん小さくなる形選んで眠る猫とわたくし(蒼井杏)

土曜日にバルテュス展へ行った。
「絵を描くことは祈りの一つ、神に行きつく一つの道だと、確信しています。」
絵をすべて観終えたあとにこの言葉を読んで、来れてよかったなぁとしみじみ思った。