絵と生活
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やさしさには犀の涙

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1/29 『ひまわり』を観にきたひとのそれぞれの午後を預かる名画座の椅子(うたの日『後』)

たんとんとん十八話、菅井きんさんがでてきてうれしい。

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1/30 ありふれた奇跡のひとつ人ならば九十歳になるうちの犬(うたの日『なら/ならば』)

『セクシー田中さん』、七巻の冒頭にすごくていねいにドラマ化について書かれていたのを思い出してそれが余計につらい。つらいので妹にふっと言ってみたら、妹も楽しみに読んでいたことを知った。コミックス派でネタバレを避けたい方は8巻読了後にみたほうがいいけど、8巻はドラマ放映後の来年発売予定でごめんなさい、というように書かれていたので、そうかあ8巻出るの待つ!ってそのときは思っていた。単話で買えるところまで買った。

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1/31 頬紅や口紅の濃さをたずねられ母の死顔まじまじと見る(うたの日『頬』)

『想い出づくり。』、毎日してるからちょっとたまってきた。でも見始めるとやっぱりおもしろくて見入ってしまう。第五話は柴田恭兵の語りからはじまり、他の男たちもやたらと語っていた。それで思ったのは、古手川祐子はモノローグなんだけど、男たちは女たちに語ってくる。自分の話をあたりまえに聞いてもらえるって思えるにはどういう風に生きてきたらできるんだろう。森昌子はことわってもことわってもやってくる見合い相手に話そうとするとさえぎられる。

鶫とは鳴かざる鳥と書かれおり殺されるときは鳴くのだろうか

/吉川宏志『雪の偶然』

この歌が歌集の一首目なの毎回ひらくたびすごいなと思う。

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2/1 タワレコの試聴機できく音楽がすべてきらきらしてた思春期(うたの日『試』)

作りたい女と食べたい女、恵方巻をつくってたべる様子をみているだけでしあわせな気持ちになる。

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2/2 二人乗りのスワンボートは一人でも乗れる わたしは強くなりたい(うたの日『二』)

『永い言い訳』の桜の花びらの浮かぶ湖を本木雅弘がスワンボートをひとりで漕いでいるシーンが好き。

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2/3 成分表によるとあなたのやさしさには犀の涙が入っています(うたの日『分』)

『想い出づくり。』で、田中裕子の「なんかしゃべって」に「キルケゴールは…、」ってなんでもキルケゴールで返すキルケゴールの男が出てくるのとてもいい。

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2/4 ストーブは薬缶を頭に乗せながら春の野原の夢をみている(うたの日『野』)

指紋を取り終えたので、警察がびりびりになったポスターを返しに来た。またびりびりにされるんじゃないだろうかと、身構えていたけれど、そういうときはぜんぜんなにもない。

この星は現品限り

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1/22 絶望が尻尾を巻いて逃げてゆく ときどきこちらを振り向きながら(うたの日『尾』)

たんとんとん十三話、『おやじ太鼓』の杉本(『兄弟』では三崎)がでてきて、実況が盛り上がる。脇役やチョイ役が多彩で楽しいのが木下恵介アワーの醍醐味のひとつだと思う。

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1/23 空爆をするひと、受けるひと、ぼくは遠くからみているだけのひと(うたの日『爆』)

『想い出づくり。』の再放送はじまった。なんか前みたときよりもさらにおもしろくかんじる。

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1/24 河出文庫の梟たちに聞いてみる新潮文庫のパンダの行方(うたの日『パンダ』)

『想い出づくり。』の浜村さんを思い出していて、『想い出づくり。』って、ものすごく簡単にいうと「浜村淳に騙された森昌子と古手川祐子と田中裕子がともだちになる話」なのでは、と思った。

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1/25 老け役の名俳優のやわらかな日本語を聴きつつねむる冬(うたの日『老』)

小津安二郎の映画をみても、山田太一のドラマをみても笠智衆がいて、ぼんやりしてるとあたまに笠智衆があらわれる。月刊ドラマの山田太一追悼号が買えなかった。そのかわり2013年の河出書房のムック「山田太一 テレビから聴こえたアフォリズム」が買えたから買ったんだけど、充実度がすごい。読み応えがありすぎる。本当に買ってよかった。

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1/26 この星も私も現品限りだと思えばなんでもできる気がした(うたの日『品』)

「ガザ 封鎖された町で」「市民が見た戦乱のガザ 12月」「己の影を抱きしめて 清水眞砂子」をみてねる。昔話の「めでたしめでたし、は祈り」って、そう考えたことなくてはっとした。

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1/27 あたたかい蜜柑色した羽だった祖母にはじめて教わった鶴(うたの日『鶴』)

『想い出づくり。』2,3,4話をみて、まじでなんなんだこの男どもは、ってなる。結婚以外、なんかないのかって田中裕子は言う。2話目みるとこんなに暴力的な世界に生きないといけないのか、と暗澹とした気持ちになってしまった。今ましになったようにみえるけれど、根底にあるのはこういう世界だと思う。『想い出づくり。』もう一度みたいと思ったのは、柴田恭兵と古手川祐子の結婚が謎で、気が付いたら手品みたいにふたりが結婚することになっていたのが気になったから。

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1/28 老犬の痩せたからだに影ばかりさみしく育つ夕暮れの道(うたの日『体』)

NHK短歌、竹林さんが一席だった。ことばのバトンに『ゴンちゃん』のかまちよしろうさんが出てきた。着ている柴犬のセーターがとてもかわいかった。

好きなかんじに年をとる

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1/15 好きなひとが好きなかんじに年を取り春の木琴みたいにわらう(うたの日『琴』)

さらっさらヘアーの近藤正臣さんをみていたらできた歌。たんとんとん八話。黒田こと小坂一也さんのあらたなイラストが登場した。そして「二人の世界」がオルガンで流れる。30分いっしゅんでおわってしまった。夜中に犬が下痢っぽくなり、4時までみていた。とてもねむい。

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1/16 少女らの恋の話に花が咲き辺りいちめん花びらになる(うたの日『辺』)

犬の体調にふりまわされる。『あたしンちSUPER』を買ってしまった。寝る前に読むのにちょうどいい。代々受け継がれるはなうたの話、うちも母が「ナッポーリタン♪」っていう謎のはなうたを歌っていた。何の歌なのかわからないまま。CMとかなのかな。

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1/17 理不尽なこの世を生きてゆくために強く握ったパン屋のトング(うたの日『理』)

地震から、29年。

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1/18 祈るときこころはきっと線になる パウル・クレーの天使のような(うたの日『きっと』)

たんとんとん十一話。加藤治子さま登場!「さま」とつけたくなる迫力だった。木下恵介アワーをはみだしているかんじがした。あーほんとうに加藤治子さんがよかった。みおわっても加藤治子さんの余韻が。

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1/19 ずんだ餅のあかるいみどり 妹のまだ目立たない腹におさまる(うたの日『餅』)

ずんだ餅、妹と仙台駅で食べたなあ、とこの間ずんだ餅食べた時に走馬灯みたいに思って、東京で初めて個展したとき、妊婦なのに日帰りで観に来てくれたことも思い出していて、歌になった。あいかわらず犬の体調にふりまわされてねむい。

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1/20 犬のいた春、夏、秋、冬それぞれの光をずっと覚えていたい(うたの日『ずっと』)

『神作家・紫式部のありえない日々』の最新話、、彰子さま尊い、と思いつつ読んで、『光る君へ』のことを思い出し、たまたま深夜に再放送していたので観た。めちゃくちゃおもしろかった。明日の三話をすぐに録画予約した。

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1/21 夕暮れにタコと大根煮る父の生成りのエプロン輝いている(うたの日『根』)

父は生成りのエプロンとエメラルドグリーンのエプロンを持っていて、なにか父の基準に沿って生成りの日とエメラルドグリーンの日がある。

 

祝福のかわり

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1/8 落葉樹の胸の辺りに残された淋しい臓器のような鳥の巣(うたの日『巣』)

犬の遠い方の散歩コースでわりと大きな木に鳥の巣がある。でもその木が何の木なのか調べても調べてもはっきりしない。「落葉樹」ということだけは確かなんだけど、わたしの木の解像度では落葉樹までしか判断できないから何の木かわからないまま歌にした。

『たんとんとん』三話目もおもしろい。30分あっという間。森田健作とミヤコ蝶々のやりとりがいい。「仁義切るみたいだね」もよかったし、白髪抜くシーンもよかったなあ。そして最後に近藤正臣さんが!

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1/9 祝福のかわりにきみの手のひらにいちばん羽ばたきそうな詩集を(うたの日『羽』)

『たんとんとん』四話。近藤正臣さんの髪、さらっさらだ。

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1/10 風の便りは切手が不要ですけれど速達でしたら雪の切手を(うたの日『自由詠』)

『たんとんとん』五話。スローモーションでおちょくってくる近藤正臣さんがみられた。

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1/11 塗り薬を塗るたびそっと花びらのようにめくった老犬の耳(うたの日『犬』)

『たんとんとん』六話。建前の回。家建てる工程、おもしろいしためになる。「みんなケロケロっとテレビなんかみてんじゃないかって」「ケロケロっとしてるようにみえる?」ケロケロした会話をしていた。ブンブンブンブブンブンブンってまた魅力的な劇伴が登場した。

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1/12 もしきみが映画館なら今もまだときどき会いに行けたんだけど(うたの日『まだ』)

甥っ子の大好きなあたしンちが新作アニメ制作するとニュースになっていたので甥っ子に伝えた。『たんとんとん』七話。不思議な回だった。タコ社長と松岡きっこが留守番中によっぱらい、怒られ、最後は一本締めで終わった。「いい加減同士がいろんな文句言い言い、なんとなく暮らしてるのがいいと思う」っていう杉浦直樹さんの言い分がよかった。

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1/13 泣きそうなきみに手渡すうつくしく凍った百円硬貨の桜(うたの日『渡』)

『たんとんとん』のオープニングイラストが小坂一也さんらしいとXで知る。小坂一也さんって多才すぎる。

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1/14 二度寝って寄り道みたい どの駅で降りてもきみに会えるとおもう(うたの日『寄』)

十何年かぶりにずんだ餅を食べたら、昔食べたときよりびっくりするくらいおいしかった。

 

やさしくて古い友人

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1/1 自分にも人にもやさしくしたいからこころを春のみずうみに置く(うたの日『令和六年の抱負』)

地震。不安な気持ちをまぎらすために『新・喜びも悲しみも幾歳月』をもう一度観る。二回観てもやっぱりいい。植木等がとってもいい。いろんな灯台を観られるのもたのしい。小坂一也さんが水浸しでたいへんなことになる水ノ子島灯台は、1986年まで灯台守が常駐していたってすごいことだなあと思う。息子の船を見送る大原麗子の「戦争へいく船じゃなくてよかった」って台詞や、原爆ドーム前で植木等がタクシーを止めるようにいって黙祷するシーンをみると、いまよりもっと戦争に近かった戦後、戦争を経験したひとが身近にふつうにいた時代を感じる。

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1/2 眠り方を忘れてしまうような日は小川洋子をお守りにする(うたの日『守』)

「100分de宗教論」、『深い河』の大津を黒田大輔が朗読していてとてもよかった。

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1/3 わたくしの年賀状から逃げだした龍がそちらに向かっています(うたの日『龍』)

日々のクオリア、門脇さんが終わってしまったなあとさみしく思っていたら、今年は土井礼一郎さんに。たのしみ。

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1/4 映画館の闇はいまでもやさしくて古い友人みたいにおもう(うたの日『闇』)

『たんとんとん』、はじまった!オープニングのイラストが素敵すぎてびびる。美術の出川三男さんが描いているということなのか。すごいんだけど。

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1/5 神妙に割り箸を割る甥っ子のうちなる小さな小さなモーゼ(うたの日『モーゼ』)

『たんとんとん』二話目。おもしろい。これはおもしろいぞ、と二話目でもう思った。でも、あおい輝彦や沢田雅美、竹脇無我、栗原小巻、三島雅夫、菅井きん、がなつかしくなって土日に再放送している『三人家族』『二人の世界』を録画してもう一度みることにした。

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1/6 さみしいと言えないひとにさみしいとルビ振るように雪は降りだす(うたの日『振』)

神戸新聞の随想が海猫沢めろんさんだった。そして前からずっと気になっていた筆名の話だった。北欧文学者でノルディック・カウンシル文学賞を受賞しているエミネ・コザーロンをもじってると書かれていた。※追記、次の随想で「あれはうそです」と書かれていた。筆名、謎のままだ。

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1/7 要するに死ぬのも生きるのもこわいこの世の果ての横断歩道(うたの日『要』)

母と昔よく行っていた豆腐屋が閉店したと知った。父が湯豆腐をしたいと言い出して、湯豆腐するならあの豆腐屋の豆腐がいいと話していたところだった。豆乳に凝っていたときに豆乳買ってたなあとか、豆腐ドーナツをつい買っちゃうこと、買わなくてもおまけでニ、三個くれたことなんかを思い出す。

<いのります>ボタン

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12/25 <とまります>ボタンじゃなくて<いのります>ボタンの光る天国のバス(うたの日『祈』)

『光る君へ』、『神作家・紫式部のありえない日々』がよぎる。藤原宣孝が佐々木蔵之介!とてもよい。

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12/26 M-1を観ずにあなたと食べている聖なる夜の聖なるちくわ(うたの日『聖』)

犬の体調に振り回されて一日が終わる。毎日とてもねむい。

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12/27 わたくしのちいさなちいさな雪原へ二円切手のウサギを放つ(うたの日『雪』)

『あしたからの恋』、スナックでトワ・エ・モアが「誰もいない海」を歌い、小坂一也が辺見マリの「経験」を口ずさみ、岸ユキがカルメン・マキの「時には母のない子のように」をギターを弾きつつ歌う、回だった。小坂一也さんの歌もっと聴きたい。

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12/28 母の死を吹雪のように受け止める 父と針葉樹林になって(うたの日『雪』)

「森の王 森の声 〜遊動の民ラウテ」をみた。思い出という名の少女サムジャナがとても素敵だった。

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12/29 来年は「星」や「光」になるといい 私の今年の漢字は「無」です(うたの日『光』)

市長は「讃」だった。『あしたからの恋』、最終回。はー、おわってしまった。でてくるひとみんな好きになってしまういいドラマだった。次は山田太一の『たんとんとん』!

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12/30 北風と太陽に脱がされそうな素敵なコートを着て逢いにゆく(うたの日『北』)

「あの日 あのとき あの番組 拝啓 山田太一様」をみた。カチンコを持った山田太一やドラマ初期のはなしが少しきけてうれしい。ちょうどなにかを探しているときにあおい輝彦のインタビューがでてきて、「山田太一さんが助監督でカチンコ打っていました」って読んだところだった。

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12/31 よいお年を、よいお年を、と鳴いているようなカラスの年の瀬の声(うたの日『鳴』)

『新・喜びも悲しみも幾歳月』を観ながら年越し。とてもやさしい映画。すっごくよかった。『三人家族』『二人の世界』『おやじ太鼓』『兄弟』『あしたからの恋』をみてからみると、しみじみよかった。小坂一也さんが出てきて、「黒田!」ってなった。木下恵介アワーな一年だったので、今年最後に観る映画にぴったりだった。木下恵介アワーのドラマといっしょでなんともいえない幸福な気持ちになる。

老犬の耳のうしろを掻きながら主題歌のない今年が終わる(うたの日『歌』)

 

おやすみ、だけの国

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12/18 あたたかいフランスパンを抱きしめる。おやすみ、だけの国へゆきたい(うたの日『める』)

『ああ家族』始まった。一話目でいきなり赤木春恵さんが長男長女次女をビンタした。

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12/19 雪という共通言語 ひとひらじゃなにも言えずにとけてしまうね(うたの日『言』)

『ああ家族』二話目、山口崇が妻の大空眞弓をビンタ。そして、『あしたからの恋』でもビンタ。昨日からビンタばかりみている。

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12/20 久しぶり、なんていらない。この庭へツグミのように来てほしいだけ(うたの日『庭』)

『晩春』、怒っている原節子がうつくしい。うなずく笠智衆、三島雅夫の蝶ネクタイ、これがうわさの壺のシーンか、と思いつつたのしく観た。でもとにかく最後の月丘夢路が笠智衆のおでこにキスするシーンにびっくりした。小津安二郎の映画をみていて一番びっくりしたかも。

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12/21 こんぺいとうのようにあちこち散らばって星新一はかえってこない(うたの日『返ってこないもの』)

ものすごくさむい。顔が痛い。犬はなぜかこういうすっごい寒い日は歩きたがる。1時間×3回の散歩をした。フリースのベストにフリースを重ねるととてもあたたかい。『ああ家族』、みるのがだいぶしんどい。どうしたらいいんだ。でもみるけれど。『あしたからの恋』は「あしたからの恋のために飲みますか!」っていうタイトルを回収する台詞がでてきた。

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12/22 うつくしい仕立てのオーダースーツからはみ出たしっぽを隠す政治家(うたの日『政治家』)

今日も寒い。そして犬は食欲が落ちているのにすごく歩く。人間でいうと90歳くらいと言われたので、食べたいものを食べてもらって、歩きたいときは歩かせてってしているけれど、寒すぎて人間のほうがつらい。でも来年歩いてないかもだし、もしかしたらいない可能性もあるし、って思うと歩きたいなら好きなだけどうぞ、という気持ちになる。

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12/23 震災の前の話をするたびにわたしはわたしの炎にふれる(うたの日『前』)

大根をもらったり豚汁をもらったりした。父はチンゲン菜をもらって帰ってきた

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12/24 もう何も消したくないと消しゴムがとつぜん発狂する十二月(うたの日『擬人化』)

イブだけれど、門松をつくっている家は門松をつくっていた。竹と奔放にのびた松がささっているものがところせましと並んでいる。

ラーメンの汁を捨てて、つづく

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12/11 うつくしく花を束ねてゆくひとの花に傷つけられた指さき(うたの日『自由詠』)

『あしたからの恋』に杉本(おやじ太鼓)が出てきた!実況も盛り上がっていた。『兄弟』にでてきたときも「杉本!」ってなった。直也と勉の父役の野々村潔が岩下志麻の父だと知ってからみると、すごく似てる。似てるなあと出てくるたび思う。

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12/12 「お嬢ちゃんくらいのときに」と語り出す未来の私、しあわせですか(うたの日『嬢』)

『花嫁』、あと二話でおわってしまう。奈良岡さんと沢田雅美さんのやりとり、永遠にみていたい。

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12/13 キキララのかきかた鉛筆1ダースほしかったころ食べていた雪(うたの日『ダース』)

『あしたからの恋』、范文雀の迫力すごい。ひと悶着ありそうなときに毎回「ピコピコピコピコピコピコピコピコ」って音楽が鳴り始める。

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12/14 鯛焼きを齧るわたしの夕暮れに「つづく」と書いて今日を終えたい(うたの日『鯛焼き』)

木下恵介アワーは、というか昔のドラマは、なのか、「つづく」が出るとき絵画のようにきまって終わる。「つづく」だけの画面を集めた画集があればほしい。海にドライブにいくところで終わったときは海が映されて「つづく」なのがとてもよかった。あと忘れられないのが『おやじ太鼓』でホテルのアクリルキーに「つづく」。『花嫁』、終わってしまった。奈良岡さんのドラマもっとみたい。

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12/15 冬眠をするクマしないクマがいて恋愛しないわたくしもいる(うたの日『ない』)

録画した『麦秋』を観る。紀子は亡くなった兄の友人と結婚を決めるのだけど、亡くなったひとの話ができるひとと結婚するってなにかとてもしっくりくる。何回みても淡島千景と原節子のやりとりがかわいい。二人が秋田弁でしゃべりだすところがとくに好き。三宅邦子と原節子が海へ行く場面も何回みてもいい。『麦秋』は英語タイトルだと『Early Summer』でなるほどだった。

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12/16 終バスの差し出す光の中へゆく星降る夜もうつむきながら(うたの日『中』)

『お茶漬の味』は『The Flavor of Green Tea over Rice』なんだ。Flavorなのいいな。

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12/17 ラーメンの汁を捨てつつこれまでの流せなかった涙をおもう(うたの日『捨』)

近所で門松を作ってる家がある。夕方犬の散歩で通ると、湘南乃風的な音楽を爆音で流しながら門松を数人で作っていた。

 

夢の治安

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12/4 思い出をまだら模様にする雪が降る日に灯す石油ストーブ(うたの日『斑』)

『チロルの挽歌』、山田太一でなかったら興味ないなって思いつつ観たら、めちゃくちゃおもしろい。

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12/5 言語野のツンドラ地帯へゆくときはホッキョクウサギを案内役に(うたの日『ツンドラ』)

『あしたからの恋』、毎回おもしろい。30分がほんとに一瞬。Xでロケ地をつぶやいてくれているひとがいて、気になっていた勉と桃子が散歩していた場所は駒沢オリンピック公園だった。菊久月の最寄り駅は九品仏駅らしく、地図を眺めた。

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12/6 お時間でございます、という声を聞く いつかこの世を去る日のように(うたの日『ございます』)

木下恵介の弔辞で山田太一が「ある時、木下作品の一作一作がみるみる燦然と輝きはじめ、今まで目を向けなかったことをいぶかしむような時代がきっとまた来ると思っています。」と述べていて、山田太一の言っていた「時代」が今来ているなあと思いながら木下恵介アワーをみている。

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12/7 久方の光に浮かぶ食卓で父と聴き入る谷村新司(うたの日『久』)

『チロルの挽歌』、ほんとにおもしろかった。三人のことなのに、市長がみんなを集めて話し合うことになるってすごい不思議な状況になっていた。山田太一のドラマみてると、やっぱり「男らしさの否定」がある。今回のドラマもいちばん男らしいの大原麗子だった。菅井きんがもっと出てきてほしかった。

 

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12/8 冬空の澄みゆく青の心地よさ そういう死後の時間を得たい(うたの日『得』)

ムサシノ輪舞曲の最新話が読みたくてFEELYOUNGを買う。白菜を抱えて隠れる環さんがとってもよかった。

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12/9 乗客も床を転がる空き缶も内に密かな闇を抱えて(うたの日『電車』)

ギャスパー・ノエの新作『ヴォルテックス』が気になる。え、ダリオ・アルジェントが夫役なんだ。

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12/10 水鳥の羽根につつまれ眠る冬 夢の治安はいかがでしょうか(うたの日『安』)

羽根布団ってすばらしいなって冬になるたびに思う。

 

ポテトチップス開ける音

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11/27 魔法使いの弟子は魔法をつかわずに林檎をすべてウサギに変える(うたの日『弟子/師匠』)

寝る前か朝起きた時に吉川さんがふらんす堂で連載している短歌日記を読む。きょうは「時代のリアリティー」について書かれていた。今、昔のドラマばかりみているので、「時代のリアリティー」って、探していた言葉のような気がした。

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11/28 真夜中にポテトチップス開ける音きこえるような打ちあけ話(うたの日『打』)

ドラマ『花嫁』、もう30話!あとたった10話しかない。今日は沢田雅美さんのでんぐり返しが見られてよかった。でもこんなかなしいでんぐり返し、はじめてみた。というか、ここででんぐり返しがでてくると思わなかった。向田邦子っぽくもあるし、沢田雅美さんのアドリブっぽくもある。

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11/29 神様を殴りたそうな父の手が母のお骨をやさしく包む(うたの日『殴』)

『花嫁』で沢田雅美さんのおおきいかみさまには見捨てられたけどちいさいかみさまにはまだ見捨てられてない、というような台詞がよかった。(ちいさいかみさまにもそのあとすぐ見捨てられるんだけど)

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11/30 ビリジアンを白で覆ってゆく画家の筆に撫でられ眠るシマリス(うたの日『ビリ』)

『花嫁』が終わったら『ああ家族』がはじまる。大空眞弓、赤木春恵、山口崇、なので観たい。

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12/1 営業が終わったあともペコちゃんはペコちゃんだから舌をだしてる(うたの日『営』)

BSNHKが『東京物語』『お早う』『秋刀魚の味』をするから、BS松竹東急も小津安二郎してくれないかなあと思っていたら、『晩春』『宗方姉妹』『麦秋』『東京暮色』『小早川家の秋』をする。さすがのラインナップ。『宗方姉妹』、みてないからうれしい。それに『小早川家の秋』。初めて観た小津安二郎の映画なので、もう一度観たいと思ってたけれど、なぜかなかなかみる機会がなかった。『小早川家の秋』は2回も映画館で観ているのに2回ともおもしろいのかおもしろくないのか当時よくわからなかった。

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12/2 昨日から山田太一の脚本にかわったように冬が厳しい(うたの日『冬』)

木下恵介はやさしい、山田太一はきびしい、のような気がした。山田太一がきびしいと思ったのは、『沿線地図』で笠智衆が自殺するところ、『男たちの旅路』で鶴田浩二が失踪するところ、あとこの前みていた『兄弟』で父が若手社員に営業部長から引きずり降ろされるところ。

うたの日のお題をみようと朝スマホをさわったら、ふっと「早春スケッチブック」の文字が見出しにみえた気がして、山田太一の訃報を知った。「早春スケッチブック」が今見出しになるって、山田太一が亡くなったときしかないだろうって思った。

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12/3 コタツにも指定席あり母がふと戻ってきそうな二年目の冬(うたの日『冬』)

NHK短歌をみているとその前の「こころの時代〜宗教・人生〜」もついでにみるようになり、今回の「かわいい民藝 救いの美」もおもしろかった。「自分ひとりでは抱えきれない不条理を阿弥陀様が解決したんじゃなくて抱きしめる」って話が印象深かった。

 

かみさまも靴ずれ

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11/20 神様が「雪」と打ったら雪が降るひんやりとしたキーボード打つ(うたの日『キーボード』)

妹がアフタヌーンティーのりんごシュトーレンをくれた。

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11/21 わたくしと河出文庫のフクロウの鳥籠になる夜のキッチン(うたの日『鳥』)

『あしたからの恋』、万博に行く話がでてくる。

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11/22 てのひらを雪の棺として君は白のミトンをつけて差しだす(うたの日『君』)

『あしたからの恋』は和菓子屋とラーメン屋なのでみているとなにかしら食べたくなる。今日は柏餅と味噌ラーメンが食べたくなった。

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11/23 かみさまも靴ずれですか いつもより時間がゆっくりすすむ水曜(うたの日『ずれ』)

ヒューマニエンス「“死の迎え方” ヒトの穏やかな死とは」、とてもおもしろかった。「私にとって死は愛の状態の世界からやってきてそこに戻っていくもの」、心的外傷後成長のときにでてきた患者さんの言葉がすごかった。

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11/24 妹と一番ブスな顔をして夜明けに母を見送った冬(うたの日『ブス』)

母の三回忌で神出のオーベルジュへ。フランス料理を食べた。フランス料理っていっても、法事の料理っぽくアレンジされたやつだろうって思っていたら、がっつりコース料理だった。甥っ子がものすごくよろこんでいた。

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11/25 ゆっくりとスワンボートはすれ違う疎遠になってゆくひとばかり(うたの日『疎』)

もはやXは木下恵介アワーの実況をみるためだけの存在になっている。

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11/26 リーダーの不在の日本の水ぎわをひととき占拠するユリカモメ(うたの日『リーダー』)

『あしたからの恋』、そこはかとなく小津安二郎感がある。山岡久乃さんがおっとり気質の妻とウィキペディアに書いてあって、山岡久乃さんが?ってなってたけれど、ほんとにおっとりしたかんじでとってもかわいい。

 

銀河から雪みたいな会話

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11/13 銀河から届いたようなはつふゆの瓶牛乳の白のつめたさ(うたの日『白』)

瓶牛乳が月・水・金と届く。朝でなく、深夜に2時くらいに。取り出す瓶牛乳を冷たさで季節を感じる。

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11/14 雪女だったらきみに初雪を毎年忘れず贈るとおもう(うたの日『贈』)

『おんなは一生懸命』、怒涛。そして杉村春子の独白。杉村春子さんの声色や口調って説得力がある。『花嫁』をみていたら病院の自動販売機がロッテのだった。ロッテの自動販売機からロッテのオレンジジュースを買っていた。みたことないパッケージ。プルタブがとれる缶がなつかしい。

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11/15 『無題』でもいいからきみと一枚の絵におさまってしまいたい冬(うたの日『題』)

雨宮まみさんの命日でしんみりしていたら、早月くらさんが歌壇賞を受賞されたと知ってなんだか元気をもらった。

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11/16 ふたりだけになったさいしょの雪の日に父がはじめてつくったポトフ(うたの日『ポトフ』)

『あしたからの恋』はじまった!オープニング、恋の字がとびだしてきた。そして今回は小坂一也さんが歌ってる。

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11/17 私より褒められ慣れている犬の自己肯定感高き鳴き声(うたの日『慣れ/馴れ』)

『永遠の人』を楽しみにしていたのに放送が変更になってしまってかなしい。いつかみれますように。

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11/18 この国で生きるしかなく手のひらに塚本邦雄の皇帝ペンギン(うたの日『塚』)

「続 五味太郎はいかが?」を途中からみた。うーん最初からみたい。「そのひとはそのひとからはじまっている」っていい言葉だな。

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11/19 きみの街の書店を一周するあいだの積もらない雪みたいな会話(うたの日『周』)

家の壁に貼ってあるポスターがびりびりにやぶかれ、深夜に不審な男がぶつぶつ言いながら徘徊していて怖すぎて警察を呼んだ。ポスターを黄色い専用のビニールの手提げ袋にいれているとき、その袋がちょっとほしいと思ってしまった。びりびりになったポスターを指さして写真を撮ったんだけれど、そのときふっと映画『リング』の指をさしてる男を思い出した。

 

飼い犬と十一月の浅瀬

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11/6 冬の毛をふっくら着込む飼い犬と十一月の浅瀬をあるく(うたの日『瀬』)

録画したDOC2をみたら、インド映画みたいなダンスシーンがあってびっくりした。

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11/7 十一月なのにぬくくて指さきのニベアが雪の比喩にならない(うたの日『月』)

『兄弟』のあと『あしたからの恋』。山田太一じゃないのかあって思ったけど、あらすじちらっとみるとおもしろそうで楽しみ。それにしても『兄弟』はほんとおもしろい。

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11/8 わををん、と子音を意識するように月夜に吠えるわたくしの犬(うたの日『子音』)

わわんとかわうやわをんと吠えわけて犬の気分もさまざまに春

/荻原裕幸『永遠よりも少し短い日常』

この「わをん」を思い出していた。

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11/9 まだ産めるわたしの躰を映しだす避妊手術を終えた犬の眼(うたの日『手術』)

『ムサシノ輪舞曲』3巻でた。うれしい。

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11/10 ムクドリを魅了している駅前の欅は今日もダンディーに立つ(うたの日『魅』)

『兄弟』の静男にも順二にも結局ずっと魅力をかんじないのだけれど、いい息子だというのだけわかる。紀子役の秋山ゆりさんは見れば見るほど小津安二郎的うつくしさがある。会社のときも家で父といるときのくだけたかんじもどちらも素敵。だからなぜ静男とって思ってしまう。

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11/11 どこか遠い星へ転送されてゆくみたいに光るひだまりの犬(うたの日『自由詠』)

個人的な大江健三郎、テレビをつけたらやっていた。こうの史代さんの描く大江健三郎がかわいい。「すべてよし!」っていい言葉だなあ。

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11/12 合歓の木のようにあなたがねむるから世界はすこし単純になる(うたの日『合』)

ミャクミャクさまの作者やましたこうへいさんの「おばあちゃんとかめ」、おもしろい。

 

チャーハンの素とうすいたましい

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10/30 チャーハンの素を買わなくなり自我の芽生えはじめた父の炒飯(うたの日『炒』)

『兄弟』に出てきた喫茶菰(まこも)、いいな。もしも喫茶店するならこの名前がいい。

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10/31 恋人はカクレクマノミ わたくしが珊瑚になって百年経つわ(うたの日『「珊瑚」と「百」を詠み込んで』)

うたの日3500回の記念回だった。2500回の記念回から11回目の記念回。なんかほんとに長くつづけてるなあとしみじみした。

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11/1 週一で鳥語を習う スズメらの歌会始に呼ばれてみたい(うたの日『500週間あれば何とか出来そうなこと』)

昨日の題に引き続き、すごい題だった。

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11/2 木漏れ日が金貨のように降る往路 わたしはわたしに全額賭ける(うたの日『木』)

木更津くんの8巻をやっと買って読む。久しぶりに読む紙の漫画は絵の迫力がちがう。

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11/3 米作りをやめてしまった父の手と秋のひざしに撫でられる犬(うたの日『米』)

『いま ここを歩く〜映画監督・岩井俊二〜』、よかった。「この世界がどうであれ生きていくしかないんだという 前に進んでいくしかないんだということ」ってまさに岩井俊二の映画そのままの言葉だと思う。

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11/4 欲しかった本を手にとるうれしさは寿命をすこし延ばすとおもう(うたの日『手』)

相対性理論を聴くと『みじかい髪も長い髪も炎』が読みたくなる。

すごい雨とすごい風だよ 魂は口にくわえてきみに追いつく

/平岡直子『みじかい髪も長い髪も炎』

この魂って口にくわえられるくらいうすいからハムみたいな魂を想像してる。

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11/5 この世から去る日のようにたましいよりうすい文庫を鞄にいれる(うたの日『去』)

永遠よりも少しみじかい旅だから猫よりも少しおもいかばんを

/荻原裕幸『デジタル・ビスケット』

「永遠よりも少しみじかい旅」って生の旅だとおもってたけど、死なのかなってふと思った。

このかばんって、

ボールペンが落ちても鞄をひらいてもすべての音が十月である

/荻原裕幸『永遠よりも少し短い日常』

このかばんとおなじ鞄だとずっと思っている。

 

仲はいいけれど

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10/23 秋薔薇は話の中で咲き終り陽なたに残るストローの茎(うたの日『茎』)

『兄弟』は毎回「紀子さん、すてき」ばかり思ってしまう。「兄弟」ってタイトルだから兄弟が主役だと思うんだけど、びっくりするくらい兄弟に魅力を感じない。でもこのだめなかんじが魅力なんだろうか。あとおそろしいのは、兄弟の父がえらそうなんだけど、そのえらそうなかんじを兄弟ふたりとも受け継いでいる。

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10/24 仲はいいけれどあの子の泣き顔をわたしは一度も見たことがない(うたの日『仲』)

ヒューマニエンスで、25歳くらいにならないと大人の脳にならない、と言っていた。えっ、って思ったけど、思い返すとそんな気がする。

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10/25 木漏れ日に体育座りするきみはうつくしい秋のペーパーウエイト(うたの日『育』)

うたの日の題、朝7時に見て、9時に提出する、っていうのが一番最短だと思っていたけれど、今日は、8時半にみて9時提出という、いまだかつてない短さのなかでなんとか出せた。

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10/26 葱刻む音を聴きつつキッチンはすっかり父の領土とおもう(うたの日『葱』)

「葱という漢字なんにもしない日の/柳本々々」がまず最初にでてきてしまう、葱って。

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10/27 老犬がひっそりこぼす涙から生まれた小さな星に住みたい(うたの日『涙』)

『ココニイルコト』ってずーっと気になってる映画、明石の天文科学館が出てくるって新聞で初めて知った。昔、アシッド映画館ってラジオ番組を熱心に聴いていて、そこで紹介されていていつか観たいなあと思いつつ、2001年公開の映画だから22年経ってる。

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10/28 生年から没年までの一本の道の途中で嗅ぐ金木犀(うたの日『没』)

月がとてもあかるくて、満月、と思ってみていたが調べると正確には99.8%の月だった。

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10/29 しみじみとリア充じゃないわたくしが着ている空五倍子色のフリース(うたの日『リア充』)

風は吹く 風が吹いたら空五倍子のあなたのシャツを国旗に変えて

/牛隆佑『鳥の跡、洞の音』

空五倍子(うつぶし)、最初何かわからなくてしらべた。しらべたら私も使いたくなった。いつか使おうって思ったけど、わりと早く使ってしまった。荻原さんの歌にユニクロのフリースの歌があった気がして作った歌でもあるんだけれど、

晴れだけれど空が窶れてゐるやうな真冬の青を選ぶユニクロ

/荻原裕幸『永遠よりも少し短い日常』

フリースとは言っていなかった。でもたぶんフリースだと思ってしまう。この次の歌が

暫く雲になりたい白いセーターと冬のひかりを着て街をゆく

/同

で、セットで読むのが好き。この歌上の句の、暫く雲に、なりたい、白い、のとこがいつも気持ちいいなあって思う。

三日月の返却口

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10/16 ドローンの眼(まなこ)が映す空爆後の廃墟のガザの空をゆく鳩(うたの日『イスラエル/パレスチナ』)

鳩、いっしゅん映った。

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10/17 退職後の父に寄り添うように立つ実家の庭の柿の老木(うたの日『木』)

『花嫁』『兄弟』『おんなは一生懸命』、どれもおもしろい。『兄弟』は秋山ゆり、沢田雅美、津島恵子、菅井きん、女性陣がすべて魅力的だ。

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10/18 すみません、わたしのいちばん奥にある部屋は面会謝絶なんです。(うたの日『奥』)

こころを面会謝絶の馬が駆け抜けてたちまち暮れてゆく冬の街

/笹川諒『水の聖歌隊』

いちばん好きな面会謝絶。

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10/19 「いっせーの、せ」で羽ばたいた少女らのそれぞれちがう美しい翅(うたの日『いっせーの』)

『秋刀魚の味』って英語タイトルは『Autumn Afternoon』になるんだとアマゾンをみて知った。でも『The taste of Sanma』ってレビューで書いているひともいる。『Autumn Afternoon』のほうがなんか響きが小津安二郎に合ってる。

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10/20 シマリスの宣伝部長がどんぐりを名刺がわりにそっと差し出す(うたの日『長』)

山田太一のエッセイに『東京画』がでてきた。“ヴェンダースは東京タワーにのぼる。すると、そこに映画監督ヘルツォークがいて、眼下の東京を見下ろして「ここにはなにもない」という。”と書かれていて、ぼんやりみたいなあと思っていた『東京画』、めちゃくちゃ観たくなった。

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10/21 三日月の返却口が見つからずツキノワグマとして生きてます(うたの日『返』)

じゃんけんで勝ったクマたち三日月をもらってツキノワグマになった

豪雪の重いまぶたがとけるまで桜もツキノワグマもねむる

わたくしの全財産になりますとツキノワグマが差し出した月

一滴のツキノワグマの涙からはじまる哀しい雪解けでした

この夜のトロフィーとして念入りにツキノワグマが磨く三日月

ツキノワグマで六首も作っている。今回は数日前に斉藤知子さんの絵みたいな三日月をみたのを思い出して作った。

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10/22 水面にささって眠るフラミンゴを抜くためだけの釘抜きがある(うたの日『抜』)

NHK短歌に竹林ミ來さんの歌が。とてもミ來さんらしい歌だった。

 

うれしい顔の犬

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10/9 毛布みたいな言葉がほしい さむいってつまりさみしいだとおもうから(うたの日『つまり』)

『おやじ太鼓』も『ほんとうに』も明日が最終回ってほんとなのかっていうくらいごたごたしてる。どう終わるのか全く分からない。

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10/10 *(わたくしの打つパスワードからつくられた雪の結晶)(うたの日『リスク』)

『おやじ太鼓』も『ほんとうに』もちゃんと終わった。とくに『おやじ太鼓』はすごかった。あと10分しかないんだけど…、あと5分…、あと3分!ってはらはらした。終わってしまってほんとにさびしい。

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10/11 手を翳せばもう撫でられているときのうれしい顔になっている犬(うたの日『自由詠』)

『おんなは一生懸命』始まった。ほんとにおんなはいっしょうけんめいってかんじだ。ぜんぜん期待せずみていたけれど、すごくひきこまれる。なんなんだろう。泉ピン子にひきこまれてるんだろうか。『兄弟』も始まった。沢田雅美さんのウエイトレス姿がとてもかわいい。

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10/12 かなしみはしずかな冬の井戸になりときどき星が覗きにきます(うたの日『自由詠』)

『おんなは一生懸命』、展開がはやい。つづきがものすごく気になって終わった。奈良岡朋子さんのナレーションはやっぱりよい。

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10/13 天国の図書館であなたがめくる笹井宏之第十歌集(うたの日『天』)

「僕は怖くない」を久しぶりに聴いた。なんかふとしたときに訪れてもちゃんと更新され続けていて、けっこうこころのよりどころのようになっている。久しぶりに聴いてもはじめて聴いたときと全く変わらないトーンで雑談をしていてほっとする。

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10/14 梨が消え朝の陽が消え忘れられた泉のような硝子のうつわ(うたの日『泉』)

「“同じで違う”傷を、共に生きて〜震災から12年 夫婦の日々〜」、すごいドキュメンタリーだった。「コーヒーと線香のかおりのする喫茶店」に着地するとは思わなかった。傷と時間について考えさせられる。この前読み終わった『生皮』も傷と時間の話でもあるなあと思った。『傷を愛せるか』を思い出したりもした。

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10/15 パジャマ着た母がごめんなさいと言う 幼い頃のわたしのように(うたの日『ごめんなさい』)

山田太一のエッセイを読んでいたら、「若い頃、小津安二郎さんの映画がよく分らなかった」と書いてあって、山田太一でもわからなかったんだ、と思った。しかも「それは私だけではなく、昭和三十年代の松竹大船撮影所に勤めていた二十代の助監督の多くが、同じ撮影所の先輩である小津さんに対して抱いた気持ちだった。」とあって、時代や立場に関係なく、若いときにわからないのがふつうなのかもしれない。わからないまま年を取って、年取ったときに出会いなおしたとき、小津安二郎って「えっ、こんなおもしろかったっけ?」ってほんとにびびる。どの映画も出会いなおせるけど、小津安二郎はやっぱり特別だった。

 

小さなワニの小さなあくび

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10/2 いま何処にいますか? こちらはひつじ雲の渋滞に巻き込まれています(うたの日『何』)

スターリンク衛星、うっすらみえた。

荻原さんの歌って、「何」が多い気がする。何かわからないものがある、かんじ。あと荻原さんは「無」と「ひかり」の歌人って勝手に思っている。ふつう光ってなにかにあたってその物がみえてくるかんじだけれど、荻原さんは光があたってもそこにみえてくるのは「無」だ。

冬のプールに冬のひかりが音もなく何も照らさぬまま揺れてゐる

/荻原裕幸『永遠よりも少し短い日常』

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10/3 ひとりにはもう慣れましたポロシャツの小さなワニの小さなあくび(うたの日『ワニ』)

十月のカレンダーは木彫りの豚で、その豚をみるとトンカツが食べたくなる。三沢厚彦さんのカレンダー、来年も買いたい。

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10/4 蔓薔薇と抱き合うように朽ちてゆく廃屋がみる凍蝶の夢(うたの日『蔓』)

凍蝶をいまファミマの前で見たといふ題なのにメールは空白で

/荻原裕幸『永遠よりも少し短い日常』

もう二日メールが来ない青鷺をはじめてみたと言つたひとから

/魚村晋太郎『銀耳』

荻原さんの歌を読んだ後、『銀耳』ひらいたら、一番最初がこの歌だった。

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10/5 好きな子を探り合いつつ少女らが子リスのように齧るじゃがりこ(うたの日『リス』)

『おやじ太鼓』の次は『兄弟』がはじまる!BS松竹東急、ほんとにありがとう。

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10/6 まだ遠いひかりのような来年が手帳売り場にぎっしり並ぶ(うたの日『売/買』)

神尾「人間は月へも行くようになったけど、やっぱり人間の知恵では分からないことがあるよ。人間の魂の問題は」

秋子「神秘なことはあったほうがいいわ。人間は少し思い上がってるわよ。原爆を作ったり、月へ飛んでったり。もう人間っていうより怪物ね」

大江健三郎の魂の問題のことをあれこれ読んでいたら、たまたまおやじ太鼓の竹脇無我のセリフにも魂の問題がでてきた。

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10/7 <美しい日本>のために見たくないものには靄をかけてゆくひと(うたの日『靄』)

寝る前にたまたまみた「大拙先生とわたし」がめちゃくちゃおもしろかった。もう一度りんごを齧る。すごい。

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10/8 信仰を持つひとも持たないひとも木犀の香に気づく坂道(うたの日『信仰』)

秋祭りに行ってきた甥っ子が、サンタか?ってくらいおもちゃを抱えてかえってきた。そのなかのブーメランをふたりで飛ばす。お祭りでは型抜きもしたらしい。型抜きっていまもあるんだ。買ってきてくれたたこ焼きにはとうもろこしがはいっていた。

 

明日にはくたびれている

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9/25 まだ母の歯ブラシのある洗面所の朝のひかりがひどく淋しい(うたの日『まだ』)

二年そのままになっている。

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9/26 あたたかい紅茶に添える焼き菓子のような言葉を探しています(うたの日『紅』)

秋祭りの太鼓の練習する音が散歩のときに聞こえるんだけれど、めちゃくちゃうまくなっていた。最初聴こえてきたときは、不安になるくらいばらばらの音だったのに、すごい。

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9/27 初秋に食べる速度を追い越してつぎつぎ並ぶ栗味の菓子(うたの日『越』)

生協で、八つ橋、秋出雲、文明堂のカステラ、アルフォート、パルム、中村屋のうすあわせ、などをくり味にひかれて買った。

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9/28 なつかしい歌が聴こえて過去へゆくトンネルになるわたくしの耳(うたの日『耳』)

この歌つくるときふっと『Helpless』のトンネルを思い出した。BS松竹東急で『CURE』をしていて、最後の20分だけ観た。

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9/29 「まだ麦茶、炊いています。」くらいしか近況がない秋の入り口(うたの日『茶』)

録画していた『CURE』を冒頭30分ほど観た。毎回観るたびにピクニックへ行くかのようなのどかな音楽ではじまるのがこわい。夕方も夜も夜中も散歩中のすべての月がとても明るかった。

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9/30 何年も仔猫のように抱いているちいさなちいさな悲しみがある(うたの日『悲』)

金木犀がいっしゅん香った気がする。そして『CURE』、久しぶりに観たら何もわからなくなってしまった。

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10/1 明日にはくたびれている新聞を朝のひかりの真ん中に置く(うたの日『朝』)

『CURE』は、個人的な高部は妻との時間をとって妻を理解したいと思っているけれど、社会的な警察官としての高部は間宮の方を優先して理解しようとしなければならなくて、妻と間宮のあいだで引き裂かれてしまうジレンマに陥る話。(と今回みて思った。観るたび毎回ちがうことを思う気がする)。妻を理解しなければと思おうとすればするほど、本当は妻が疎ましいと思っている自分が出てくる。間宮という妻に似た存在によってそれがより鮮明になってしまう。それで結局、間宮も妻も自分の世界から消して、ジレンマから抜け出しんだけれど、あの最後のすっきりとした高部の様子ってもう「ひとの形をしたひとではないもの」ってかんじだ。

渋谷からムーミン谷

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9/18 「渋谷からムーミン谷へ直通のバスがでてるときいたのですが」(うたの日『谷』)

昼休みおわりのチャイムにゆっくりとムーミン谷から戻る図書室

いやだいやだムーミン谷にやってきた彗星ほどの絶望がくる

ムーミン谷の歌、これで三首目になった。

 

みぃみむらむーみんとろるすなふきん逢魔が時のひかりやさしく

/こりけケリ仔(うたの日『魔』)

ムーミンの歌だとこの歌がいちばん好き。

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9/19 去年から同じページにはさまって待ちくたびれた栞紐(スピン)にふれる(うたの日『去』)

読みさしになっていた井上荒野『生皮』を読み始めた。なんかずいぶん経ってるような気がしてたけど、2022年の発行だった。

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9/20 ささやかな悪意の兆す夕暮れの窓辺で燃えるわたくしの指(うたの日『悪』)

『生皮』にもでてくる“そのことはあまり言わないほうがいいよ。”って言葉、ほんとうに嫌な言葉だなあと思う。同じくらい嫌いなのが「でも、ほんとうはいいひとなんだよ」。

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9/21 アルバムの祖父の隣にいつもいる名前も知らないまっしろな犬(うたの日『ない』)

わたしがたぶん2歳くらいのとき祖父は庭の廃車で白いでかい犬を飼っていた。車の後部座席にいたのをうっすら覚えている。ずっと犬がそばにいるこども時代だったので、通学路にいるハスキー犬をふつうにさわっていたのを思い出す。いまだったらぜったいしない。

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9/22 途中からきみはねむってスクリーンの光を毛布みたいにかぶる(うたの日『光』)

もうこれずっとなのかなって思っていた犬の深夜の散歩、今日は起きてこなかった。すずしいと睡眠>散歩なのかな。

ムーミンの歌、

ムーミントロールみたいにつるつるのブルーがいいとおもふ水曜

/魚村晋太郎『花柄』

この歌のことを、はっ!と思い出した。この歌もとても好き。

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9/23 再結成することもなくベランダでしずかに揺れるバンドTシャツ(うたの日『揺』)

相変わらず『おやじ太鼓』を毎日みている。戦後のたべもののないときにもところてんは手に入ったとか「ゲバ棒」がふつうに家族の会話でつかわれてるとかその時代のことが知れるのもおもしろい。今の大学生はいそがしいって話で、「とんだりはねたりゲバ棒をふりまわしたり」って台詞がでてきた。

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9/24 飼い犬が散歩の夢を見るときに隣にわたしがいたらうれしい(うたの日『見』)

NHK短歌のゲストが上野水香さんでときめいた。

 

神様の一身上の都合

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9/11 たましいを預けるように老犬が老人に凭れてねむる駅(うたの日『自由詠』)

配達完了の写真にうつる玄関は知らないひとの家みたいにみえる。

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9/12 どの本もわたしを呼んでいるような気がして耳を澄ます古書店(うたの日『呼』)

『おやじ太鼓』45話。敬四郎がドラえもんみたいな服を着ていてツイッターのひとたちが盛り上がっていた。ほんとにドラえもんにしかみえない。でもこのときドラえもんはまだ生まれていないとあとで知った。

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9/13 犬とゆく「いつもの道」はこの犬がいなくなったら「いつかの道」に(うたの日『いつも』)

うたの日、1000日続いた。こんなに長く参加すると思わなかった。

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9/14 たましいを削ってみたら鉛筆に似た粉がでてちょっと戸惑う(うたの日『粉』)

牛さんの歌集が届いた。牛さんと同い年でしみじみよかったなあと思う。

不思議MANブラザーズバンド現れて信じることが不思議だと言う

/牛隆佑『鳥の跡、洞の音』

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9/15 あなたには私にそのとき必要な風を手渡す才能がある(うたの日『能』)

風。そしてあなたがねむる数万の夜へわたしはシーツをかける

/笹井宏之『てんとろり』

笹井さんの「あなた」ってほとんど「わたし」のような気がした。完全な他者ではなくわたしと入れ替わり可能の「あなた」のような気がする。『ふつつかな悪女ではございますが 』は入れ替わりの話で読むとふっと笹井さんの歌を思い出す。短歌の中でなら何にでもなれるから「あなた」にもなれる。

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9/16 祝福のビールを浴びて列島をゆめみごこちで駆けてゆく虎(うたの日『駆』)

阪神優勝した。18年ぶりってきくと、18年前の自分なにしてたんだろうって考える。18年前って、今以上に何もしてなかった。

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9/17 神様の一身上の都合によりすべての星が閉店します(うたの日『身』)

DOC2あすへのカルテ、楽しみにしてたけど、観る元気がない。しかしみはじめるとはじまって3分でいろんなことがありまくる。元気ないとかぜんぜん関係なく夢中になってみてしまった。

或いは一冊の本

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9/4 〈読書する女〉になったわたくしを退屈な絵のようにみる犬(うたの日『私』)

『おやじ太鼓』第一部最終回。はーすごかった。ツイッターの実況のひとたちとともにみた。毎回予想のつかない展開だけど、今回も全く予想のつかない展開だった。いままでみたなかでいちばんの大団円で最終回らしい最終回だった。昔のドラマの脚本の力業のすごさ。

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9/5 月光に溺れる街でまだ終りじゃないと上を向く扇風機(うたの日『じゃない』)

梨の季節がやって来てとてもうれしい。『おやじ太鼓』第二部、いきなりタイから始まった。武男はタイではしかに、敬四郎は二浪に。「機動隊になぐられるか全学連になぐられるか」って台詞がでてきて時代を感じる。

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9/6 灯台のようにあなたへ「おやすみ」を毎夜届けるひとになりたい(うたの日『毎』)

犬の散歩中、スターリンク衛星が消えていくところを見た。『おやじ太鼓』、30分なのに武男、洋二、三郎、幸子、それぞれのドラマが展開される。「昭和恋模様百景」ってつぶやいているひとがいた。ほんとそんなかんじ。

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9/7 映画ならこのまま始まらなくていい小声でずっと話していたい(うたの日『いい』)

スターリンク衛星、妹と見るぞ!って意気込んでいたのにものすごく曇っていた。『ほんとうに』も『おやじ太鼓』もみんなよく歌っていて、昔のドラマってよく歌うなあって思う。

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9/8 曇天へあなたがそっと射し込んだ光、或いは一冊の本(うたの日『曇』)

『おやじ太鼓』、母の日でこどもたちがみなカーネーションを一輪もって帰ってくる。なんかおとぎ話みたいだった。そういえば第一部のラストシーンもおとぎ話みたいだった。七人のこびとみたいな。だから第二部は夢からさめたような現実的な展開のように思う。

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9/9 親指も人差し指もなんとなく本をめくりたがっている秋(うたの日『指』)

八つ橋のくりが気になって生協で注文していたのがきた。ものすごくあまい。八つ橋ってこんな甘かったのか。くりの粒が餡にはいっていて、いいんだけど、やっぱりとても甘すぎて一個でもういらないってなる。

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9/10 「ひつじ雲、送りました」と切手のないハガキが届き秋のはじまり(うたの日『手』)

八つ橋、父が気に入って食べている。八つ橋を食べるところなんて初めて見た気がする。うちの犬に似ている石をもらった。犬と石を写真におさめて、「とても似てます」と送った。

 

木漏れ日を踏む

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8/28 夕暮れに好きな作家の新刊を一番星のように探した(うたの日『作』)

いつか祖母が煮しめた蕗の味はひを思ひつつ読む長嶋有を

/山田航『水に沈む羊』

久しぶりに読んだら、こんな歌あったのかってなった。見逃していた自分にびっくりした。

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8/29 エンドロールみたいな夏の夜をゆく好きなバンドのTシャツを着て(うたの日『みたい』)

NHK短歌の岡野さんの回『ライブ』をみて作った。こういう歌が作れるようになるまで2年半以上かかっていて、岡野さんってやっぱり天才なんだな、と思った。

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8/30 この星にとっても些細な誤差だから学校は今日休んでもいい(うたの日『誤』)

相変わらず漫画が読めず、でも買ってしまうから川底の石みたいにどんどん溜まっていく。月末、月初は連載で読んでる単話の配信が集中するけど、単話ですら読む気力がなくなっている。そんな状態でも『ふつつかな悪女ではございますが』は読めるし早くつづきが読みたい。

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8/31 約束を破ったひとの足もとに散らばっている木漏れ日を踏む(うたの日『破』)

『ほんとうに』、研ナオコのラベンダー色のニットに薄い色のデニム姿がかわいかった。せんべいにのりを巻く作業が気になる。

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9/1 出発の前にあなたがお守りのように一冊買う文庫本(うたの日『出』)

コジヤジコさんの新しい絵本『よるよ』が発売に。妹のこどもが1歳なので、ちょうどよさそうと思ってすすめたら、前作の『まくらからくま』を覚えてて、長男はいまでも回文といえば「まくらららくま」と言ってるときく。「まくらからくま」じゃなくて、うたうように「まくらららくま」ってアレンジして覚えてるらしい。

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9/2 映画館を出てすぐに見上げた月が満月だったなんかうれしい(うたの日『出』)

思い出したこととか目の前の出来事とかをそのまま素直に31音にすれば短歌になるんだな、と最近やっと思えるようになった。ただそう思えるまでに2年半以上かかっていて、とちゅう何度も「修行」みたいな気持ちになった。

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9/3 梨ほどの大きさになるさみしさを思いきりかっ飛ばしたい夜更け(うたの日『かっ飛』)

梨の季節がやってきてうれしい。二十世紀梨を久しぶりに食べた。二十世紀梨ってとてもなつかしい梨の味がする。

 

鍋から啜る

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8/21 どの犬も骨の形のクッキーを骨の形と知らずに食べる(うたの日『骨』)

きのうたまたまスターリンク衛星をみて、みたときはスターリンク衛星のことを知らなくて、なにあれってこわくなってしまった。

 

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8/22 王子さまがキツネと出会ったこの星であなたもきっと誰かと出会う(うたの日『狐』)

斉藤由貴の星の王子さまを昔おすすめしてもらって聴いたらとてもよくて、いまでもときどき聴きたくなる。

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8/23 母の死の手続きを終え来たときより増えた気がするロビーのメダカ(うたの日『魚』)

『ほんとうに』、杉村春子さんがでてきた。でてくるとやっぱり、おおっ、となる。

 

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8/24 罪深い夜更けの味が増すように鍋から啜るチキンラーメン(うたの日『罪』)

「津坂匡章」って秋野太作さんなんだ。すーごくすっきりした。『おやじ太鼓』みていて、なんかすごくみたことあるひとの気がするのにぜんぜん知らない名前だなあって不思議に思っていた。『おやじ太鼓』は秋野太作、あおい輝彦、沢田雅美の三人セットがとってもたのしい。

 

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8/25 昔より三倍くらいかけながら玄関まで出迎えにゆく犬(うたの日『倍』)

近所の犬たちはほとんどいなくなってしまい、うちの犬に会うと亡くなった犬の話をするひとが多い。

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8/26 篠懸の木陰の中をゆく祖母はわたしの知らない歌をうたって(うたの日『篠』)

そういえば祖母ってよく歌ってたなあって思う。どの歌も知らない歌だった。何の歌なのか聞いておけばよかった。

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8/27 お土産の鳩サブレーは二枚ずつ配られつがいのようにより添う(うたの日『ずつ』)

「こころの時代〜宗教・人生〜 遠藤周作没後25年 遺作『深い河』をたどる」をみて、『深い河』を買った。

 

 

風邪の日のわたし

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8/14 富士山に登ったひとが富士山を親しい友人みたいに話す(うたの日『好きな山』)

『おやじ太鼓』に河原崎次郎さんが出てきたんだけど、完全に河原崎長一郎さんだと思ってみていた。わたしには、河原崎長一郎、河原崎次郎、河原崎建三の見分けがつかない。みんなつくんだろうか。

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8/15 第一試合終えた球児の艶やかなコカ・コーラめく肌を照らす陽(うたの日『第一試合』)

台風が直撃で、父が「瓦がとぶかも」と心配していたが、ちょうど目のなかに入った。

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8/16 戦争の傷痕ひとつない空へ影を送った小三の夏(うたの日『戦争/平和』)

影送り、甥っ子もやっぱりしたらしい。台風の影響で瓶牛乳が届かなかった。

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8/17 カップ酒とメローイエロー ほろ酔いの祖父に教わる高校野球(うたの日『黄』)

ドラマ『道』が終わって『ほんとうに』が始まった。『心』『道』につづき長山藍子さんの発狂するような演技を一話目からみる。奈良岡朋子さんははっきり「鬼」って言ってるし、またなんかすごいドラマだ。

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8/18 リュウグウノツカイを飼っているような地下深いバーの溶けない氷(うたの日『かち割り』)

自分の家のい犬が年をとってきたので絵に描く犬も年をとってきている。

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8/19 風邪の日のわたしは無人駅になり君が来るまでねむっています(うたの日『風邪』)

天井と私のあいだを一本の各駅停車が往復する夜

/笹井宏之『ひとさらい』

風邪でねているときは天井がいつもより親しいかんじがする。風邪のこと考えてたらふっと笹井さんのこの歌を思い出して駅を借りた。

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8/20 美少年美少女が美男美女になりそののち美しい骨になる(うたの日『美男美女』)

トンカさんの訃報を正平調で知ってしまった。

 

 

 

カステラのひと

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8/7 「今日は大へんよい日でした。」とヒロシマの少女が綴る八月五日(うたの日『広島』)

「原爆が奪った“未来” 〜中学生8千人・生と死の記録〜」をみてつくった。石崎睦子さんの日記の一文を借りているので、これは添え書きがいるんじゃないか、と思ってうたの日のコメント欄にあとから書いた。

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8/8 朝顔のカーテンの隙間からみるわたしの死後のような夏の陽(うたの日『アサガオ』)

あつすぎて犬が心配で一日犬にかかりきりになる。夜、散歩してるときにまた宇宙ステーションをみた。調べると中国の宇宙ステーションだった。

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8/9 八月の新刊本をそっと掬う 泉のような朝の書店で(うたの日『八』)

暑すぎるので、犬を台所にあげる。犬の抱き方で調べると、よくない抱き方はわんさかでてくるのに、正しい抱き方はひとつしかなかった。しかし難しい。妹にそのことをいうと「犬には鎖骨がないから」と言われた。

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8/10 「カステラのひと」と家族が呼んでいた顔も知らない祖父の戦友(うたの日『長崎』)

父が岐阜の鮎菓子が好きで、(そのことも最近知ったが)ふっと、昔は鮎菓子をじいさんの戦友が毎年送ってきてくれて、と突然言い出した。初めて祖父の戦友について聞いた。小津安二郎の映画でたびたび出てくる戦友たちが集って軍歌をうたうシーンを思い出す。

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8/11 水面のような平積みから本を拐えばすこし鷲の目になる(うたの日『自由詠』)

抱き方、だんだんうまくなっている気がする。たしかに正しい抱き方がうまくできると、犬がまったくばたつかない。

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8/12 朝に見た羽化のとちゅうで死んでいたセミにはふれず描いた絵日記(うたの日『宿題』)

羽化の途中で止まって死んでいるセミをみた。こどものときに見たらもっとショックだっただろうなと思った。

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8/13 少年のゆびさきを借りクワガタや夏のひかりを掴んでみたい(うたの日『クワガタ』)

胸のあたりをぐっともって体に引き寄せると犬がしっかり固定されるので、そこに意識がいっていたら、お尻を抱いている左手にあまり力が入らず、持ち上がらなくなって倒れそうになった。やっぱりむずかしい。ペルセウス座流星群、一粒だけみた。

波のようなわたくし

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7/31 シアターの光の海へ着くまでの暗渠のような廊下が好きだ(うたの日『廊』)

映画館をスクリーンまで歩くとき森の枯れ葉を踏みゆくここち

/岡野大嗣『音楽』

この歌が朧げだったから、「映画館、落ち葉、岡野大嗣」で検索したら、ヤフー知恵袋に「ゴッホでもミレーでもない僕がいて蒔きたい種を探す夕暮れ」の歌について質問しているひとがでてきた。

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8/1 夕光(ゆうかげ)のメタセコイアの並木から魁夷の白馬ふと顔をだす(うたの日『メタ』)

妹に『おやじ太鼓』のことを話す。あらすじを伝えていると、やっぱりどうなってんだっていうようなドラマだな、と思った。妹も見たがっていた。

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8/2 老犬を追い抜くときに自転車がやさしくえがく夏の曲線(うたの日『追』)

又吉・せきしろのなにもしない散歩で、61と71になってもお茶とか飲みましょう、って言っていたのがよかった。もう71回目なんだけど、途中からみてるので再放送してほしい。

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8/3 ささやかな祈りのような絵葉書の「元気?」の文字に「はい」と答える(うたの日『葉』)

立岩真也さんの訃報を新聞で知った。かなりショックでぼんやりする。

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8/4 また少しわたしの欠ける音がして乱反射する真夏の訃報(うたの日『して』)

一日経ってぼうぜんとしてる。たまたま散歩中に空を見上げたら、宇宙ステーションがすーっと通過していくのが見られた。

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8/5 近づいたり離れたりして一枚の絵を見る波のようなわたくし(うたの日『見』)

遠くで花火が上がっていて、あたまが見え隠れしていた。花火より近くで盆踊りをしていて盆踊りの音楽が聴こえたり聴こえなかったりして、今が夏の真ん中のような気がした。

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8/6 レジ袋は森山未來のように舞う葉月の風の踊り子として(うたの日『踊』)

とても暑く、犬がまた熱中症になりそうなくらいだった。サーキュレーター5台とスポットクーラーを使ってもあつい。犬に涼しい風を送るために毎日サーキュレーターの位置を細かく動かして一番いい位置を探っている。風の設計をしている気持ちになる。

棚が足りない

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7/24 時をかける少女がふたたび二日目のカレーを食べに帰る夕暮れ(うたの日『二日目のカレー』)

犬のしゃっくり、止まったと思っていたのに、ときどきでる。心配で一日のほとんどを犬を見て過ごした気がする。

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7/25 コンビニよりため池の多いふるさとを飛び立つひとのそれぞれの羽(うたの日『ため』)

しゃっくり、完全に止まったかんじ。いつもどおりよくねていた。消化器系が傷ついてたのが治った、とかかも、と妹が言っていた。

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7/26 無人島に持っていく本一冊をきみと選んだ市民図書館(うたの日『無』)

とてもあつい。

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7/27 わたくしの部品のように散らばった本をおさめる棚が足りない(うたの日『品』)

朝からとてもあつい。おやじ太鼓がカラーになった。白黒がカラーになる感動をすこし味わえた。

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7/28 「おねえちゃん」だから泣かずにラメ入りのスーパーボールゆずる縁日(うたの日『パー』)

犬が熱中症でたいへんだった。体を濡らして冷やしたりでとても疲れた。夕方には元気になってほっとした。

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7/29 炎昼の商店街の入り口にのどかにゆれる「氷」一文字(うたの日『文』)

台所の水漏れしている蛇口を水道屋さんが替えにきてくれた。蛇口全体をまるごと替えるだけだからすぐ済むと思っていたら、蛇口がはずれなくて、ものすごく時間がかかった。犬がおとなしくしているようにずっとみていてとても疲れた。『おやじ太鼓』の曲の中毒性がすごくて、気を抜くと「どんどんどどん」って頭のなかを流れる。

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7/30 祖父の好きだったみぞれを口にしてしんとひろがる夏の縁側(うたの日『かき氷』)

不思議だけど、祖父のことを思い出すのって、夏が多い。高校野球と瓶ラムネと祖父をセットで思い出すからなのかも。

 

みぞれ、みぞれ、みぞれはぼくの犬の名で祖父が好んだ氷の味だ

/岡野大嗣『たやすみなさい』

ieieと返す

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7/17 平日も休日もない飼い犬の規則正しい朝のあしおと(うたの日『休日』)

犬、年を取ったので、6時に起きた次の日は9時になっても寝てるとか全く規則正しくなくなってしまった。

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7/18 車窓から明石海峡大橋をあなたに見せるためだけに撮る(うたの日『海』)

うーん、『おやじ太鼓』、とてもおもしろい。

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7/19 たよりない日本の冷えた片隅で桃とセロリのサラダを食べる(うたの日『セロリ』)

気がつけばここは日本で晩秋のたよりないひざしが揺れてゐる

/荻原裕幸『永遠よりも少し短い日常』

を模写した。

夕方、豪雨。一気にすずしくなった。

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7/20 亡き母の喪服を借りて父と立つ思った以上に母似のわたし(うたの日『以上』)

これ以上なく、にすればよかった。でも母の葬式に母の喪服を着たこと、が歌にできてよかった。

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7/21 吠え方もすっかり忘れ水撒きの虹のふもとに眠る老犬(うたの日『すっかり』)

水を撒いていても犬は寝てる。犬は井戸のある土間に基本いるので、台所からサーキュレーターでクーラーの冷たい空気を送っている。サーキューレーター、追加で買って、四台まわしたらさすがに涼しい。それにしても『おやじ太鼓』、おもしろすぎてびっくりする。まだカラーではない頃のドラマだし、とりあえずみるかって気持ちだったんだけれど、こんなにおもしろいなんて。金がなく口が悪くおばあちゃん子の竹脇無我もよい。『道』をみてても思うけれど、昔のドラマの方が会話も展開もテンポが早い。

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7/22 thank you!とあかるく言われieieと返すしずかな夏の境内(うたの日『サンキュー』)

いままで生田神社と大阪天満宮の場所を駅で聞かれたことがあるけれど、どっちも場所はわかるけど説明ができなくてgoと言って一緒に行った。夜、犬が草を食べようとして草が刺激になったのかしゃっくりをしだした。

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7/23 わたくしの腕の時計がダリの絵のように密かにとけだす炎暑(うたの日『34℃の昼』)

うたの日、3400回の記念回だった。2500回の記念回から10回目の記念回。こんなに長くうたの日に参加すると思っていなかった。

コメダという方舟

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7/10 伏せられた鏡は夜のみずうみの夢をみている夏の病室(うたの日『るな』)

閉ぢられてある鏡にて白鳥は漆黒の夜をわたりの途中

/渡辺松男『牧野植物園』

とても好きな歌を模写した。この歌だとたぶん鏡は三面鏡だと思ったので、自分が作るときは手鏡にした。

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7/11 駅前の「本」一文字の看板がかつてわたしの灯台だった(うたの日『自由詠』)

とてもあつい。『二人の世界』最終回だった。これからのはじまり、で終わった。はーおもしろかった。

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7/12 迷いなく第一志望に芸大を書いたあの子のうつくしい指(うたの日『志』)

そして『おやじ太鼓』が始まった。えっなんか1話目からすごいな。みんな笑ってるところでおわった。シュールで『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』を思い出した。

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7/13 『七人の侍』の三船敏郎のような迫力で立つ向日葵(うたの日『七』)

えっ、『ふみちゃんの楽園』おわってしまった。とてつもなくラーメンが食べたくなる最終回だった。ヒューマニエンスで火星の話をしていて、みんな行きたくないって言ってたのがおもしろかった。

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7/14 夕立が来てコメダという方舟にきみとしずかに乗り込んでゆく(うたの日『来』)

暑中見舞いに熊谷守一の犬のポストカードが届いた。すごくいい犬の絵。

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7/15 本棚の深くにねむる妹と花柄にしたスーホの白馬(うたの日『馬』)

絵本のほとんどない家だったけれど、スーホの白い馬はあった。昔かるい気持ちで絵本教室に通ったことがある。1冊の絵本が完成するまでの途方もない時間とエネルギーを知りおそろしくなった。いまでもすべての絵本がおそろしい。

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7/16 わたしより空の深さを知っている鳶を見上げて立ちつくす夏(うたの日『鳶』)

甥っ子に花椿クッキーの缶をあげた。思った以上に気に入ってくれている。暇だというので、鶴の折り方を教えた。自分が鶴を折れるようになったのがいつなのか全然おぼえていない。